日立製作所は11月15日、レンズの代わりに同心円パターンを印刷したフィルムを用いて、動画撮影後に容易にピント調整ができるレンズレスカメラ技術を開発したと発表した。

近年、カメラの高性能化と薄型軽量化の相反するニーズの両立を目指し、撮影後に画像処理を行うことを前提としたコンピュテーショナルフォトグラフィが注目されている。すでに、特殊なレンズを用いることで、光線の位置と方向を同時に記録して撮影後のピント調整を可能としたライトフィールドカメラが存在しているが、厚みが大きくなってしまうという課題があったという。また、薄型軽量化に向けて、レンズレスカメラの開発も進められているが、撮影画像の処理に要する演算量が大きくなるという課題があったという。

今回、こうした課題の解決に向け。日立では同心円パターンのフィルムを画像センサの前で重ね合わせることによって生じるモアレ縞を活用し、フーリエ変換で撮影画像を得ることができる技術を開発したという。これにより、画像処理の計算量は、従来比で300分の1まで低減させることができたとする。また、入射する光線がフィルムを通じて画像センサ上に作る影に重ねる同心円パターンの倍率を変えると、ピント位置を移動させることができる技術も確立。これにより、自由なピント調節も可能にしたとする。

実験では、1cm角の画像センサと、センサから1mm離した位置に同心円パターンのフィルムを配置して動画撮影を行ったところ、標準的なノートパソコンで毎秒30フレームで撮影できることが確認されたという。

なお、同技術は、平面情報に加え、奥行き情報も画像センサに記録することができるため、撮影後でも任意のピント位置で動画を再生することが可能であり、同社では、モバイル機器のほか、クルマやロボットに搭載することで、作業支援、自動運転や人の行動分析などの分野での活用を目指すとしている。

日立が開発したレンズレスカメラ技術による撮影原理