東北大学などは11月7日、原子配置制御によって原子層金属/半導体の作り分けに成功したと発表した。

同成果は、東北大学原子分子材料科学高等研究機構 菅原克明助教、高橋隆教授、同大学院理学研究科 佐藤宇史准教授、東京工業大学物質理工学院 一杉太郎教授、埼玉大学大学院理工学研究科 上野啓司准教授らの研究グループによるもので、11月4日付けの英国科学誌「NPG Asia Materials」に掲載された。

層状物質であるNbSe2は、ニオブ(Nb)とセレン(Se)の層が積み重なった構造をしており、その構造ユニットは六角形をしたグラフェンのような三角プリズム型である。このプリズム型の局所構造を持つバルクのNbSe2結晶は、室温では金属で、低温で電荷密度波と超伝導という、まったく異なる状態が共存して出現することが知られている。一方で、正八面体型の原子配置を持つNbSe2は、良質の試料を作製することが困難で、その性質は未解明のままとなっていた。

単原子層NbSe2の単位格子と上から見た結晶構造の模式図。左が三角プリズム型、右が正八面体型

同研究グループは今回、分子線エピタキシー法を用いることで、グラフェン薄膜上に原子層レベルで精密に制御された高品質な単原子層NbSe2を作製することに成功。さらに、基板であるグラフェンの温度を精密に制御することで、低温加熱の場合には三角プリズム型構造ユニットを持つNbSe2を、高温加熱の場合には正八面体型構造のNbSe2を作り分けることに成功した。

さらに同研究グループは、正八面体型の構造ユニットを持つ単原子層NbSe2の電子状態について角度分解光電子分光を用いて調べ、同原子層が理論計算から予測されていたような金属的性質をまったく持たず、電子同士の強い相互作用によってバンドギャップが形成されたモット絶縁体(半導体)であることを見出した。この正八面体型NbSe2においては、複数のNb原子が集まってできる"ダビデの星"構造という特殊な電荷秩序状態が形成されていることも明らかになっている。

NbSe2原子層の電子のふるまい。三角プリズム型(左)は金属的性質をもつため自由に電子が運動するが、正八面体型(右)ではNb原子周辺に電子が局在してモット絶縁体となる

NbSe2原子層で形成される"ダビデの星"の模式図

同研究グループは今回の成果について、金属/半導体NbSe原子層薄膜を利用した超微細原子層電子デバイスへの応用展開が期待されると説明している。