日本IBMは11月7日、都内で記者会見を開催し、クラウド事業の最新動向やプライベートクラウド向けの新製品「IBM Bluemix Local System」について日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏が説明を行った。

日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏

冒頭、三澤氏は「クラウドプラットフォームとしての価値向上を目指し、IaaSであるSoftLayerとプライベートクラウドのBlueBoxをIBM Bluemixブランドに統合する。クラウドはクラウドネイティブの企業を支えるインフラとして、10数年間で発展してきたテクノロジーである一方、直近の1~2年ではクラウドネイティブだけではなく、従来からクラウドを活用していない一般企業においてもクラウドの活用が拡大している。しかし、一般企業はハイブリッドクラウドの考え方としてデータロケーションとセキュリティ、オペレーションが重要になる」と述べた。

クラウドの利用は一般企業へとシフトしている

また「これまでのクラウドのプラットフォームの競争は、コスト低減やスピード感などが挙げられるが、今後はプラットフォームにイノベーションを起こすために、どのようにして付加価値の向上を図るかが重要になる。IBMプラットフォームの体系として、IaaSはコンピューティング、ストレージ、ネットワーク、PaaSではコンテナサービス、Cloud Foundry、イベント駆動型をそろえる。顧客はアプリケーションプラットフォームを動かすために、さまざまなエンジンをIBMクラウド上で選択することを可能としているほか、クラウドプラットフォームはオープンスタンダードテクノロジーを用いて構築した。クラウドを活用したアプリにはIoTやブロックチェーン、ビデオソリューションなどが必要になるかもしれないが、われわれはそれらを1つのプラットフォーム上にソリューションとして生み出すことができ、これは競合他社との最大の差別化ポイントとなる」と続けた。

IBMクラウドプラットフォームの体型

そのような状況を踏まえ、IBMではクラウドのサービス拡充とエコシステムを拡大しており、主に「オープンテクノロジーの取り組み」「VMwareとの提携強化」「チャネル拡大の取り組み」「IBMクラウドサービスの拡充」「IBM Bluemix Local Sysytem」の5点に取り組んでいるという。

オープンテクノロジーの取り組みについては、2016年にBluemixの2つの重要なランタイムであるJavaとNode.jsのオープン化を推進しているほか、プログラミング言語のSwiftのWebアプリケーションフレームワークであるKituna向けにIBMクラウドで扱うSwift runtimeを最適化し、APIを複数のサービスに分けて開発するmicroservice APIをサポート。

VMwareとの提携強化では10月にVMware Cloud Foundation VMware vCenter Server on IBM Cloudを発表し、パートナーシップを拡大している。現在、IBMクラウド上でVMwareのソフトウェアを稼働するユーザーはグローバルで1000社以上だという。

チャネル拡大の取り組みについては、Bluemix Infrastructureの販売拡大に向けてソフトバンク コマース&サービスとの協業を開始し、クラウド・ディストリビューターとしてリセラーに対してVMware on IBM Cloudの提案を推進していく。

IBMクラウドサービスの拡充では、大規模な非構造化データをオンプレミス、クラウドに保管し、時間や場所を問わずにアクセスが可能なオブジェクトストレージサービスのIBM Object Storageを提供開始。また、Watsonを活用するクラウド・ビデオ・サービス(β版)の提供を予定し、Speech to TextやAlchemyLanguageなどのコグニティブ技術を適用し、視聴者データの分析をベースに顧客向けにカスタマイズしたコンテンツの提供を想定している。

さらに、IBM Watson Data worksは誰にでも使え、データサイエンティストなどの専門家やビジネスユーザー、アプリケーション開発者が協力できるよう一元化したデータ活用、およびアナリティクス用クラウドプラットフォーム。データ検索や顧客分析、データサイエンティストによる分析モデルの開発、自然言語を活用したデータアセットの検索・分析、Bluemixで開発したアプリとの連携などのサービスを提供する。

企業のクラウド化を支援する「IBM Bluemix Local System」

そして、同日に発表されたBluemix Local Systemは企業のハイブリッド・クラウド環境の構築とクラウド環境におけるAPIを活用したアプリ開発を支援するアプライアンス製品だ。IBM PureApplication SystemとIBM Bluemixを組み合わせたプライベート・クラウド向けアプライアンス製品となり、価格は個別見積もり。

「IBM Bluemix Local System」の概要

新製品は、企業が運用する既存の業務システムをクラウド環境に実装して稼働させるためのクラウド・イネーブルドの基本設計や設計思想と、クラウド環境でのアプリケーション開発・実行を前提とするクラウドネイティブという2つのクラウドアーキテクチャーをAPIテクノロジーによりオンプレミスで統合している。

これにより、迅速な開発と統一した運用環境を提供し、ビジネスの多様化や変化の要件に柔軟に対応することができるという。また、クラウド化において、セキュリティーとコンプライアンスに関する重要な要件に対処するために、オンプレミスで保持しなければならない機密データやワークロードを抱える企業の課題を解決するとしている。

このような特徴を活かし、同社が培ってきたシステム設計や構築のノウハウをベースに仮想マシンの構成、OSの導入・設定、ミドルウェアや監視エージェントの構成・稼働・導入、ChefやDockerなどのオープンソースの活用に必要な作業をコード化したパターンデプロイメント技術と、ワークロード、ライフサイクル管理機能を採用しているという。

システム構築を自動化することで、同社やパートナーが提供する技術を利用したアプリケーションプラットフォームの迅速な構築や更改、効率的な運用管理、冗長構成によるミッションクリティカルな業務要件に対応を可能としている。

さらに、オープンテクノロジーであるCloud Foundryを基盤として採用するBluemixの140を超えるサービスやAPIの一部を提供し、企業はこれらを組み合わせることでプログラミング工数を削減し、短期間で高機能なアプリケーションの開発と稼働を実現するという。

「IBM Bluemix Local System」の適用例

新製品は「W3500 iSCSIモデル(コスト最適化エントリーモデル)」「W3550 Flashモデル(高パフォーマンスモデル)」の2モデルを用意しており、下表は概要。

「W3500 iSCSIモデル」「W3550 Flashモデル」の概要