京都大学(京大)は10月26日、がん免疫療法の新薬「オプジーボ」の新規作用として、末梢血中に数%しか存在しない9型ヘルパーT細胞に作用して、悪性黒色腫(メラノーマ)の患者に効果を発揮することを発見したと発表した。

同成果は、京都大学大学院医学研究科 大塚篤司院内講師、同博士課程 野々村優美氏、椛島健治教授らの研究グループによるもので、10月24日付けの国際科学誌「Oncoimmunology」に掲載された。

免疫チェックポイント阻害剤である「オプジーボ(抗PD-1抗体、一般名ニボルマブ)」は、自身のがん細胞を攻撃する免疫機能を高める薬剤。一昨年、進行期の悪性黒色腫の患者について日本で保険適用となった。しかし、患者によっては高い効果を発揮する一方で、約7割の患者には効果がないとされており、その原因は明らかになっていない。

今回、同研究グループは、治療効果があった患者群となかった患者群で、免疫に関連するさまざまな種類の細胞や分子に差がないかどうか調べるため、細胞については患者の末梢血中のリンパ球をフローサイトメーターで分析し各々の数および性質を、分子については末梢血中の濃度を測定した。

この結果、リンパ球の一種である9型ヘルパーT細胞(Th9細胞)が、治療効果があった患者でオプジーボ投与後、増加していることを発見。Th9細胞を試験管内で作り出す実験では、抗PD-1抗体を加えた場合、ない場合と比べてより効率よくTh9細胞を作り出せることが明らかになった。

また、Th9細胞が作り出すインターロイキン9の作用を無効にする試薬を投与した悪性黒色腫のマウスでは、そうでないマウスに比べて悪性黒色腫が早く進行することがわかった。さらに、悪性黒色腫のがん細胞とリンパ球を試験管の中で共培養して、がん細胞を破壊する効率を測定する実験では、インターロイキン9がある場合、リンパ球がより効率よくがん細胞を破壊できることが明らかになった。

今回の結果から、同研究グループは、末梢血中Th9細胞について、オプジーボ投与後早期に治療効果を判定できるバイオマーカーとしての活用が期待できるとしている。また、Th9細胞の機能を高めることで抗腫瘍効果を高める可能性もあるという。

オプジーボ反応患者におけるTh9細胞の増加のイメージ図。オプジーボで効果のあった患者の末梢血を解析すると、Th9細胞の増加が末梢神経で見られた。Th9細胞が産生するインターロイキン9(IL-9)はCD8陽性T細胞に作用し、抗腫瘍効果を増強する