日産自動車と三菱自動車は、日産が三菱自動車の発行済み株式の34%を取得し、筆頭株主となったことを発表した。実質的な企業買収といえるもので、日産自動車の社長兼CEO(最高経営責任者)であるカルロス・ゴーン氏が三菱自動車の新会長に就任する。

日産が三菱自動車の筆頭株主に。三菱自動車の新会長にカルロス・ゴーン氏が就任した

三菱自動車は軽自動車で発覚した燃費不正問題によって、深刻な経営危機に陥っている。登録車のラインアップでも燃費不正が繰り返されていたことが明らかとなるなど、問題は拡大しており、2000年・2004年にも大規模なリコール隠しを行っていたこともあって、企業としての信用失墜は過去に例がないほど深いといえる。

日産は燃費不正の発覚まで、三菱自動車から軽自動車のOEM供給を受けており、三菱自動車の不正によって痛手を被った被害者といえる。しかし、三菱自動車と距離を置くのではなく、逆に買収して傘下に収める戦略を選んだ。この買収により、ルノー・日産アライアンスは世界トップ3の自動車グループとなり、2016年度のグローバル販売台数は1,000万台に達する見込みだ。

三菱自動車の新しい会長には、日産の社長兼CEOであるカルロス・ゴーン氏が就任する。また、三菱自動車の取締役候補として、日産はゴーン氏を含む4名を推薦した。日産のチーフパフォーマンスオフィサーであるトレバー・マン氏が三菱自動車の最高執行責任者(COO)に就任する。日産はこの買収により、現地サプライヤーの拡大、生産拠点の共用、共通プラットフォーム開発、新技術の開発分担といったスケールメリットを挙げ、日産・三菱自動車の双方に莫大なシナジー(コスト削減効果)をもたらすとしている。

三菱自動車のこれまでの経営危機に際しては、三菱重工、三菱商事などが援助してきた。しかし、不祥事を繰り返す企業体質の改善が望めないとする失望感もあり、今回の経営危機では積極的な支援は行わない模様。この事態を受けて、三菱自動車では日産に支援を要請していた。

日産は軽自動車の開発などで三菱自動車と業務提携してきた経緯がある。また、今後の自動車業界では、環境技術や自動運転の大規模な開発が必須とされ、生き残りには莫大な開発資金に耐えられる企業体力が求められる。こうした状況を踏まえ、企業規模を拡大する買収を決断したとみられる。