東京大学(東大)などは10月20日、2種類の祖先種が異種交配して「全ゲノム重複」したとされるアフリカツメガエルのゲノムの全構造を明らかにしたと発表した。

同成果は、東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 平良眞規准教授、情報・システム研究機構国立遺伝学研究所先端ゲノミクス推進センター 藤山秋佐夫特任教授、名古屋大学大学院生命農学研究科応用分子生命科学専攻 宇野好宣研究員らの研究グループによるもので、10月20日付けの英国科学誌「Nature」に掲載された。

多くの動物は父方と母方からの同一のゲノムをもつ二倍体だが、アフリカツメガエルは、異種交配および、遺伝子数が一度に倍になる「全ゲノム重複」により、ひとつの生物の中に異なる2種類のゲノムをもった「異質四倍体」とされていた。そのためアフリカツメガエルは、動物の発生の仕組みや細胞の性質を調べるうえで有用なモデル生物であるにもかかわらず、全ゲノム解読が非常に困難とされ、主要モデル生物の中で唯一行われていなかった。

今回、日本とアメリカを中心とする国際コンソーシアムは、アフリカツメガエルの全ゲノム解読に成功。加えて、アフリカツメガエルのゲノムの中にある2種類のゲノム(サブゲノム)が別々の染色体のセットに分かれて存在することを発見した。これにより、アフリカツメガエルは約1800万年前に、2つの種が異種交配と全ゲノム重複を起こして誕生した異質四倍体であること、その後2つのサブゲノムがひとつの生物のなかで異なる進化を辿ったことが明確に示されたといえる。

約5億年前の古生代カンブリア紀に脊椎動物が出現する過程で起きたとされる2回の全ゲノム重複は、遺伝子数を格段に増やし、脊椎動物の誕生とその後の多様化と繁栄をもたらした要因であったと考えられている。

今回、同研究グループが約1800万年前という比較的最近に全ゲノム重複が起こったアフリカツメガエルのゲノムを解読したことで、初めてサブゲノムを区別することができ、それをもとに重複後のサブゲノムの変化を明らかにすることができた。

ツメガエル属のカエルのなかでも、4回目と5回目の全ゲノム重複が想定される種が見つかっており、同研究グループは、今回のような解析をさらに進めることで、これまで謎であった約5億年前の2回の全ゲノム重複などが、その後の進化にどのようなインパクトを与えたかを読み解く鍵となるとしている。

異質四倍体は祖先種に由来する2つのサブゲノムをもつ。異質四倍体化の直後は、同祖染色体間に区別がないが、現在までに一方が短くなったと考えられる。そこで長い方をL、短い方をSと命名。今回、詳細なゲノム解析を行った結果、染色体LのセットとSのセットが、祖先種由来のゲノム(サブゲノム)にそれぞれ対応することが示された。そこで、2つのサブゲノムをLとSと命名し、さらに祖先種もLとSと命名した。この発見により、倍数化後のサブゲノムの変化を解析することが可能となった