キヤノンは10月18日、InP(リン化インジウム)のイマージョン回折素子の開発に成功したと発表した。

イマージョン回折素子は、一般的な反射型素子に比べて分光器の小型化、高性能化を可能にする分光用のデバイス。InPのイマージョン回折素子は、同じ波長をカバーする一般的な反射型素子を搭載した分光器と比較して、分光器の体積を約1/27に小型化することができる。そのため、これまで大きさや質量の制約で、搭載が難しかった高性能分光器を人工衛星に搭載して宇宙に打ち上げることが可能となり、宇宙観測の可能性がさらに広がることが期待される。

同社はすでにGe(ゲルマニウム)、CdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛)のイマージョン回折素子を開発しており、今回InPイマージョン回折素子をラインアップに加えたことで、近赤外線から遠赤外線まで、天文分野における赤外波長(1μm~20μm)のほぼすべての領域の分光をカバーしたことになる。

今後は、より可視光に近い波長(約0.8~1.2μm)に対応した材料によるイマージョン回折素子の開発を予定しており、キヤノンは「さまざまな材料のイマージョン回折素子をラインアップにそろえることで、波長領域に応じた最適な選択を可能とし、赤外分光分野において幅広い利用が可能となります。天文分野はもちろん、科学や医療、通信分野などへの活用を見込んでいます」とコメントしている。

キヤノンが開発したInPのイマージョン回折素子