信州大学は10月11日、重症の心臓病患者に対する新しい再生医療としてiPS細胞を使った心筋再生治療法を開発したと発表した。

同成果は、信州大学バイオメディカル研究所/医学部附属病院循環器内科 柴祐司 准教授、京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS) 南一成 特定拠点助教、イナリサーチらの研究グループによるもので、10月10日付の英国科学誌「Nature」に掲載された。

信州大学ではこれまでに、ヒトES細胞から心筋細胞を作製し、モルモット心筋梗塞モデルに移植したところ、心筋梗塞後の心臓機能が回復することを報告していた。しかし、同研究を含め従来の研究は、ヒト由来の心筋細胞を別の動物に移植する異種移植による検討であり、移植後の免疫拒絶反応を評価することは不可能であった。

今回、同研究グループは、東南アジアを中心に生息するヒトに近いカニクイザルに着目。拒絶反応が起きにくいカニクイザルを同定し、このサルからiPS細胞を作製した。さらに、通常のカニクイザルに心筋梗塞を発症させ、同種移植でiPS細胞から作った心筋細胞を移植した。この結果、移植された心筋細胞はほとんど拒絶反応の影響を受けずに生着し、心筋梗塞後の心臓機能の回復が確認できたという。

しかし、心筋細胞を移植された動物においては、一過性に不整脈の増加が副作用として見られたため、同研究グループは、今後副作用を軽減していくための研究が必要であるとしている。

拒絶反応の起きにくいサルからの同種細胞移植