九州大学(九大)などは9月27日、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因ウイルスであるムンプスウイルスがヒトに感染するために利用する受容体の構造を解明し、ウイルス糖タンパク質と結合した状態を原子レベルの分解能で可視化することに成功したと発表した。

同成果は、九州大学医学研究院 栁雄介教授、橋口隆生准教授、生体防御医学研究所 神田大輔教授、薬学研究院 白石充典助教、筑波大学 竹内薫准教授、香川大学 中北愼一准教授、中部大学 鈴木康夫客員教授、北里大学北里生命科学研究所 中山哲夫特任教授、東京大学 清水謙多郎教授、寺田透特任准教授、高エネルギー加速器研究機構 清水伸隆准教授らの研究グループによるもので、近日中に米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of USA」に掲載される予定。

同研究グループは今回、ウイルス学的実験および構造生物学的実験、コンピュータ科学計算、生化学的実験を組み合わせることで、ムンプスウイルスがヒトに感染するために利用する受容体が単純なシアル酸ではなく、α2,3-結合型シアル酸を含む3糖(シアル酸-ガラクトース-グルコース[N-アセチルグルコサミン])構造が必要であることを解明。また、受容体とウイルス糖タンパク質HNが結合した状態を原子レベルで可視化することにも成功した。受容体とウイルス糖タンパク質HNは鍵と鍵穴の関係にあることから、その詳細な結合様式が明らかになることで、阻害剤(抗ウイルス薬)の開発に役立つことが期待される。

さらに、流行性耳下腺炎のワクチン接種を受けた人や過去に感染歴がある人でもウイルスに感染してしまう現象が報告されているが、今回、12種類あるムンプスウイルスの遺伝子型間で、ウイルス糖タンパク質HNのアミノ酸配列の違いが特に大きい領域に抗体ができやすいためであることが理由のひとつであると明らかになった。

現在、九州大学の栁教授、橋口准教授らの研究グループは、阻害剤探索の研究も進めているところだという。

細胞表面にある受容体構造にウイルス表面にある糖タンパク質HNが結合することがきっかけとなり、ウイルスがヒトの細胞に侵入する。今回の研究では、その構造を原子レベルの分解能で可視化することに成功した