東芝と量子科学技術研究開発機構(量研機構)は9月26日、重粒子線がん治療装置向けの腫瘍追跡技術を開発したと発表した。

肺がんなどの呼吸に伴って動くがんを重粒子線などの放射線で治療する場合、呼吸の動きに合わせて患部に治療ビームを照射し、正常組織への影響を避ける必要がある。

呼吸に同期した照射を行うには、X線透視装置を用いて患部付近に埋め込んだマーカーを目印に腫瘍を捉える方法と、マーカーを用いず患者の体表面の動きをセンサで監視して呼気時にビームを照射する方法がある。前者は後者よりも高精度で腫瘍の位置を捉えることができるが、患者の負担が大きいため、マーカーを使わずに高い精度で腫瘍を捉える手法が求められていた。

今回開発された技術では、まず治療前に撮影した患者の鮮明な4D-CT画像をもとに、デジタル再構成シミュレーション画像(DRR画像)を作成。そのDRR画像から腫瘍のある領域と腫瘍のない領域を分け、それぞれの形態的特徴をコンピュータに学習させる。

治療時には、コンピュータが実際のX線透視画像に対して、学習で得られた形態的特徴をもとに、実際のX線透視画像内のどの領域が腫瘍かを判断。これにより、体内へ金属のマーカーを埋め込まずに、誤差1mm程度で腫瘍の位置を特定することができる。

東芝は、同技術を搭載したシステムについて、来年度の製品化を目指すとしている。

同技術の肺がん(左)および肝臓がん(右)への適用例。重粒子線呼吸同期照射のイメージ図