国際自然保護連合(IUCN)が各国内の象牙取引禁止を求める勧告を出し、このほどIUCNホームページで公表した。勧告は米国ハワイで開かれた第6回会議(総会)で11日(日本時間)賛成多数で採択された。24日から南アフリカのヨハネスブルクで開かれる第17回ワシントン条約締約国会議の議論に影響を与える可能性があるとみられている。

図 ハワイで開かれた第6回IUCN会議 のロゴ(IUCN作成・提供)

IUCNは日本時間の今月2日から11日までハワイで設立以来6回目の会議を開催。象牙目当ての密猟によりアフリカゾウは絶滅の危機にあることを重視し、各国内の象牙取引禁止を求める勧告を採択した。ワシントン条約は野生生物が商業目的の国際取引により絶滅することを防ぐために1973年に採択され75年に発効した。90年から象牙の国際取引を禁止している。しかし各国内の取引は対象外になっている。

こうした現状に対し採択された勧告は、「国内に合法的な象牙の取引市場がある国に対し、そうした市場を閉鎖するための法的な措置を取る努力をすることを勧告する」とした。日本には現在象牙市場が存在し、輸入禁止になる以前に輸入した象牙の在庫がある。国内法による手続きをすれば国内売買も可能な状態になっている。勧告は、中国や米国が国内取引も禁止する方針であることに触れ、国内取引禁止を求めた。

IUCNは自然保護や生物多様性保全のための研究や提言を行う国際機関として1948年に設立された。日本など160以上の国・地域の政府や政府機関、1,000を超える非政府組織(NGO)などが会員となっている。科学者らで組織する専門の委員会を持ち、多くの生物種の生息状況を調査している。定期的に発表する絶滅危惧(きぐ)種のリストはいくつかあるリストの中でも最も権威あるとされている。IUCN日本委員会は、国家会員1(外務省)、政府機関1(環境省)と民間団体17団体で構成されている。

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