ANSYSの日本法人であるアンシス・ジャパンは9月8日、構造、流体、熱、電磁界の解析を単一環境で実現する「ANSYS AIM」の最新バージョンとなる「v17.2」の日本語版の提供を開始したことを発表した。

従来、構造、流体、熱、電磁界といった解析は、専門のエンジニアチームが行う必要があったが、システムのメカトロニクス-エレクトロニクス連携の進展など、設計における複雑化が進んでおり、解析部門以外でもシミュレーションを活用したいというニーズが強まってきていた。ANSYS AIMは同社が同社が推進するマルチフィジックス解析を提供するツールで、同社の社長兼CEOのJim Cashman氏(2017年1月に会長へと就任する予定)が掲げてきた「あらゆる人が手軽に使えるシミュレーション」を具現化するものとなる。

今回のバージョンアップでは、熱管理向けのエンジニアリングシミュレーションの強化、設計者と解析者のコラボレーション機能の拡大が施されたほか、日本語対応がなされた。これにより、日本のエンジニアは、慣れ親しんだ日本語を用いて、シミュレーションを手軽に実行することが可能になるという(v17.2ではヘルプに関してはまだ英語のままとなっており、そちらに関しては次バージョンにて対応予定)。

従来の英語UIに加えて、新たにUIの日本語化が為された背景について、ANSYS Vice President,Asia PacficのTom Daniel Kindermans(トム・ダニエル・キンダーマン)氏は、「日本語圏はグローバルで見ても、英語圏に次ぐ規模の市場。そこに注力することは当然だ」と説明する。また、アンシス・ジャパン代表取締役社長の大古俊輔氏も、「日本地域は極めて順調に成長を続けている」としており、顧客とアンシスが構造解析や流体解析といった単体の解析ではなく、解析分野全体としてのパートナーシップを締結する機会が増えてきており、AIMの日本語化はそうした流れを後押しするものとの見方を示した。

ANSYS AIMのGUI。直感的で使い勝手が高いものとなっている

また、Kindermans氏は、「AIMはさまざまな領域のシミュレーションを手軽に提供することを可能にするもの。これにより、シミュレーションは完成した設計の検証に対する利用から、設計途中での活用を容易に行うことを可能にした。また、デジタルツインとして現実と仮想世界の垣根を取り払うことができるようになるほか、3Dプリンタを用いたカスタム製品といった付加製造の分野でのシミュレーションの活用が可能になる」と、シミュレーションの適用範囲拡大につながること、ならびに製品開発における仮想空間の活用進展がイノベーションを加速させることを強調する。

ANSYSの提供するさまざまシミュレーションツールを統合する形で活用することが可能

線形(構造)解析で得られたクラッチ筐体の変位分布のイメージ

定常(流体)解析で得られたサーマルミキサ内の流線のイメージ

このほか同社は新たな取り組みとして、2015年にビッグデータ解析プロバイダであったGear Design Solutions を買収。同社の技術を元に「SeaScapeアーキテクチャ」を開発、プラットフォーム化し、2016年5月に第1弾ツールとなる「SeaHawk」を発表している。SeaHawkは、半導体チップの設計で課題となるダイサイズ、性能、消費電力の3つの要素を最適化することを可能とするもの。また、プリント基板への実装時の問題などもシミュレーションにて確認することが可能であり、製品開発期間の短縮や信頼性向上などを図ることを可能とする。すでに活用しているユーザーは、平均5%のダイサイズ縮小を実現しているとするほか、スマートウォッチでは、アンテナのレンジをシミュレーションの活用により5倍向上させることに成功した例もあるという。

なお、ANSYS AIMは単体でも利用可能であり、価格は顧客ごとの案件となるため、個別相談としている。