IDC Japanは9月1日、「国内エンタープライズモビリティ成熟度に関するユーザー調査結果」を発表した。これによると、エンタープライズ・モビリティに取り組んでいる従業員500人以上の企業において、その半数以上は成熟度が5段階で下から2番目のステージ2(限定的導入)にあり、ステージ4やステージ5に達している企業は1割に満たないという。

国内エンタープライズ・モビリティの成熟度ステージ分布 資料:IDC Japan

同調査は、同社が2016年7月にエンタープライズ・モビリティに取り組む従業員500人以上の国内企業に勤務し、かつエンタープライズ・モビリティの戦略や計画に関して、意思決定に関与する立場にある部課長職以上の200人に対してWebアンケートを実施。その調査結果を基に国内のユーザー企業の成熟度を分析した。

同社の定義では、特定のIT環境について導入していない場合をステージ0(未導入)とし、導入後のユーザー企業の成熟度をステージ1(個人依存)、ステージ2(限定的導入)、ステージ3(標準基盤化)、ステージ4(定量的管理)、ステージ5(継続的革新)の5段階で評価している。

国内ユーザー企業では、ステージ1の成熟度を持つ企業が12.8%、ステージ2が55.1%、ステージ3が23.4%、ステージ4が6.6%、ステージ5が2.0%だった。米国での同様の調査ではステージ4とステージ5の合計が3割弱であるのに対し、国内では1割に満たない結果となった。

成長期の端緒にあるテクノロジー市場では、導入・展開によりビジネス成果を出している企業が投資を拡大する一方、競合企業が追随して投資を積極化することで競争を活性化しているという。国内のユーザー企業では、その構造を牽引すべきステージ4/ステージ5にある企業の構成比率が低いことは、米国に比べてモビリティを利用したビジネス競争が活性化しにくいことを示唆している。

このことは、グローバル競争に晒されている国内企業が、エンタープライズ・モビリティに対する投資姿勢を改めないと、競争劣位に陥る可能性が高いことを示していると同社は指摘する。

同社のPC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーである敷田康氏は、「本調査レポートの結果を見た国内企業の中には、『エンタープライズ・モビリティの国内企業の成熟度は思いのほか低い』と安堵する企業があるかも知れない。しかし、これを差別化のチャンスと捉える企業とそうでない企業とでは、今後、顧客満足度や従業員の生産性といった領域で競争力に差が出てくるであろう」とコメントしている。