日本ユニシスは9月1日、長野県塩尻市でメッシュ型地域通信ネットワーク(NerveNet)の新たな実証実験を開始すると発表した。第2弾の実験では、多様な時空間データを最適に利用する時空間データ管理プラットフォームのあり方を検討するとともに、従来の防災無線を補完するために災害時における利用を行い、塩尻市を含む地域でNerveNetの継続的な利用や実用化を目指す。

ビジネスエコシステムのイメージ

NerveNetは情報通信研究機構(NICT)が開発したもので、従来の携帯電話や固定電話とは異なり、各基地局のサーバに情報を持ち、かつ基地局同士を網の目のようにメッシュで接続する。また、自動経路生成機能を持つことで、回線が切断されても分散配置した別のサーバからサービス提供を継続でき、地域通信ネットワークの耐災害性を向上しているという。

同社は同市において2015年7月から第1弾の実証実験を実施し、耐災害ネットワークの平時利用を狙い、NerveNetを使用して行政情報や災害情報などを安定的に情報配信した。

今回の実証実験では、引き続き平時利用の取り組みとしてバス接近情報を配信し、多様な時空間データ(自動車などの移動体の緯度・経度・高度といった位置と時刻のデータ)を最適に利用する時空間データ管理プラットフォームのあり方を検討する。

郊外に住む自動車を運転しない高齢者は、バスが重要な生活の足となっているが、バス停付近の施設にはバス接近に関する情報が不足しているため、高齢者が炎天下や降雪時に屋根のないバス停でバスを待ち続ける課題がある。特に積雪が多い冬場は、バスが渋滞により遅延しがちなため、高齢者が病院への通院により体を悪くする可能性があると同社は指摘している。

このような地域ニーズを踏まえ、NerveNetのブロードキャスト通信の仕組みを用いて、バスの位置と時刻情報を市内複数のデジタルサイネージ(電子看板)へ配信し、地図上にバスの現在位置をバス接近情報として表示。

これにより、高齢者は市役所・支所や図書館、病院などのロビー、待合室で快適にバスを待つことができるという。さらに、バス利用者の利便性や快適性向上によりバス利用者の増加を見込むことができ、公共施設の集客や街の賑わいの創出も期待している。

また、すでに構築した耐災害性ネットワークを複数の平時アプリケーションのプラットフォームとして利用することで、経済的な効果が見込んでいる。加えて、NerveNet単体での特徴を生かして多様な災害シーンを想定し、従来の防災無線を補完するために災害時における利用を行う考えだ。

バス接近情報の画面イメージ

具体的には、9月4日に同市の両小野中学校で開催予定の「塩尻市民総合防災訓練」でNerveNetを使用し、従来の防災無線を補完する機能として災害時に役立つ情報収集・配信のデモンストレーションを予定している。

デモンストレーションでは、NerveNet基地局を使用した地域内音声通話や音声ファイルの同報配信、耳の不自由な人のための文字による安否情報の収集配信、デジタル・サイネージを使用した情報配信、紙媒体や手書き文字の情報配信を行う。

同社では、同市などの地域でNerveNetの継続的な利用や実用化を目指し、これまでの実証実験や実証フィールドで得た成果を生かして、オープン・イノベーションを見据えたビジネスモデルを検討していく。また、同市周辺の自治体や企業への展開、応用、地元地域の大学やベンチャーとのコラボレーションを引き続き行う。