富士通 執行役員常務 グローバルマーケティング部門長 阪井洋之氏

富士通と日本マイクロソフトは9月1日、顧客のワークスタイル変革を実現するグローバルコミュニケーション基盤の導入促進に向けた連携を強化すると発表した。その一環として、富士通はグローバルで約16万人の従業員が用いるコミュニケーション基盤をOffice 365などと連携させ、マルチクラウド型に刷新する。

富士通 執行役員常務 グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏は、「昨今、注目を集めているデジタル・トランスフォーメーションはビジネスモデルの変革、事業の卓越性、顧客との親密性、商品の優位性を生み出すが、これらにおいて、ワークスタイル変革は従業員のエンパワーメント、顧客のより良い理解、インテリジェンスの活用といったことを強化する」、両社が顧客のワークスタイル変革に向けて注力する背景を語った。

富士通は2010年より、マイクロソフト製品を中心としたプライベートクラウドベースのグローバルコミュニケーション基盤を導入しており、ワークスタイル変革のためのシステム範囲を段階的に拡大してきた。

段階を踏んで進化してきた富士通のグローバルコミュニケーション基盤

阪井氏はコミュニケーション基盤の進化による成果として、「Web会議の年間利用が130万回」「社内SNSのコミュニティ数が3600」といった、ワークスタイル変革の効果を得られたことを紹介した。

そしてこのたび、富士通のクラウド基盤を中核とするデジタルビジネス・プラットフォーム「FUJITSU Digital Business Platform MetaAr」と、マイクロソフトの統合型情報共有クラウドサービス「Office 365」、クラウド認証基盤「Azure Active Directory Premium(Azure ADP)」を連携させることに踏み切る。新基盤は、2017年3月から運用開始を予定している。

マルチクラウド型に刷新される富士通のグローバルコミュニケーション基盤

例えば、Azure ADPの採用により、2000を超える他社クラウドサービスとの連携など、マルチクラウド環境でのシングルサインオンや多要素認証を実現する。また、マシンラーニングを活用したサイバー攻撃を検知する機能と、手のひら静脈認証などの富士通独自の生体認証機能と組み合わせることで、より高い利便性と堅牢なセキュリティを実現する。

阪井氏は、マルチクラウドに移行することで期待している効果として、「すべてのユーザーが常に最新機能を利用できること」「認証基盤の統一による使い勝手とセキュリティの向上」を挙げた。

顧客向けの施策としては、富士通のデジタル革新の実現に向けた共創ワークショップ空間「FUJITSU Digital Transformation Center(DTC)」とマイクロソフトの最新テクノロジーを体感できる施設「マイクロソフトテクノロジーセンター(以下、MTC)」を相互活用した導入促進に向けた連携を強化する。

具体的には、ワークスタイル変革などのデジタルトランスフォーメーションの提案、検証プロセスを両社が連携して実施する「デジタルトランスフォーメーション コネクト プログラム」を開始する。

同プログラムでは、MTCでグローバルでの先進テクノロジーやデジタル革新事例の紹介、グローバル経営のリファレンスの紹介などの各種ブリーフィングを行い、顧客のワークスタイル変革の検討につながるコンテンツをご提供。続いて、DTCで顧客とワークショップによる現在の課題やその解決方法、将来構想の経営ビジョンの策定支援を行う。

「デジタルトランスフォーメーション コネクト プログラム」の流れ

阪井氏によると、DTCでは60件のワークショップが開催、そのうち30件が商談に結びついており、新規ビジネスを掘り起こすきっかけとして手ごたえをつかんでいるという。

「FUJITSU Digital Transformation Center(DTC)」の概要

日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏

日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏は、今回の協業の意義について、「当社でさえユーザー数は10万人であるなか、グローバルで16万人のユーザーがOffice 365を導入するのは世界最大級となり、インパクトが大きい。コミュニケーション基盤としてパブリッククラウドであるOffice 365を利用することが業界のデファクト・スタンダードになるというメッセージが出てくるだろう。今後は、より多くのシナリオの下で協業を広げ、ワークスタイル変革からビジネストランスフォーメーション全体へビジネスチャンスを求めていくことができるだろう」と語った。