動物病院では「キャリーに猫が入らないので今日は病院に行けません」と電話を頂くことがしばしばあります。通院に苦慮する飼い主さんは多く、電話の向こうでは猫の鳴き声が聞こえてくることも。

猫はとても賢い動物なので一度病院で嫌な思いをすると、「キャリーに入れられる=病院に行く」と理解し、そして一生忘れません。

もしかすると、使っているキャリーが入りにくいものかもしれません。キャリーを変えることでグンと猫を入れることが簡単になります。もっとも入れやすいのは下記のタイプです。

このキャリーは上がドアになっており、素早く閉めることができます。上が開くタイプのキャリーは他にもありますが、バックルやチャックを閉めなくてはいけなかったりすると時間がかかり、その間に逃げられます。

こちらのキャリーは閉めやすく、分解すると洗いやすく、そして頑丈でもあるので多くの動物病院でも使われています。なお、横から入れると嫌がるので上の蓋を使いましょう。

このように前脚と後脚を手で掴むと入れやすいです。脚が自由だとキャリーの縁に引っ掛けて抵抗してしまいますからね。(モデル:カツオ♂ 1歳)

キャリーを縦にすると奥行きが出てさらに脱出しにくくなります。もし自宅にもう一人いれば、キャリーが動かないように固定してもらうとなおやり易いでしょう。病院の中で脱走してしまった猫も、この入れ方をすることが多いです。

やっぱり布製のキャリーが良い! そんな方には

布製のキャリーは柔らかく猫に優しいですが、変形がしやすい点と、ジップをかけている間に抜け出されやすいのが難点です。しかし、それでも、どうしても布製が良いという場合は、Sleepypodという会社のキャリーがオススメです。

このキャリーは比較的剛性があり、変形しません。猫は横からではなく、上のジップから入れましょう。ジップは直線なので素早く閉めることができます。中のスペースが広いので、体温測定や聴診などはキャリーの中で行うこともできます。こちらはデザイン性も高いので日常的に部屋に置いておいてもインテリアを害さないのが良いですね。日頃から猫が使い慣れているとなお入れやすいです。

最後に「入れやすいキャリーの特徴」

・固さがある
・上が開く
・閉めるのが簡単
・奥行きがある

キャリーを購入する際は、この4点を踏まえて選ぶと良いでしょう。逆に、例えばジップで蓋の周りを1周しなくてはいけないキャリーや、ドアが小さすぎるキャリー、生地が柔らかすぎるものは入れるのに苦慮します。

中にはとても入れづらいものもあり、キャリーの出し入れだけで猫が疲れてしまうので買い換えてもらうこともあります。注射や聴診、体温測定が中でできるキャリーにするだけで病院でのストレスがすごく減るので、とてもオススメです。

■著者プロフィール
山本宗伸

獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み今年帰国。8月1日の猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialists開院に向けて準備中。ブログ nekopeidaも毎月更新中。