アライドテレシスは8月25日、京都大学大学院情報学研究科 守倉研究室(守倉正博 教授)と、無線LANアクセスポイント(AP)の電波干渉を抑制する新たなしくみである高密度無線LAN最適制御技術『Network AI』を共同開発し、2017年度に実用化すると発表した。

無線LANにおいては、電波干渉によりスループットが低下することはよく知られている。そのための対策としては、電波出力を抑制し、AP同士の干渉を抑えることや、利用するチャンネルを変更する方法が利用されている。

Network AIも、この2つの方法を用いて干渉を抑える点には変わりないが、Network AIでは各要素が相互に依存する状況を数学的に理論化する「ゲーム理論」を用いてネットワーク全体を最適化する。

具体的には、電波出力に関しては「各APは少なくとも1つの他のAPのカバレッジ内いること」という条件で、各APの出力を徐々に下げ、チャンネルの割当に関しては、「AP同士のカバーエリアのオーバーラップの面積がもっとも小さくなるように各APが順次選択」というルールでそれぞれ最適化を行うのだという(なお、各APのカバーエリアは計算によって求めるため、柱などの障害物がある場合は、余裕を考慮することが必要)。

電波出力の調整

チャンネルの割当

京都大学 大学院情報学研究所 準教授 山本高至氏

京都大学 大学院情報学研究所 準教授 山本高至氏によれば、チャネルの割当については、各APのカバレッジが異なっていても有限回数で収束することは、数学的に証明できるという。

なお、電波出力とチャンネルの最適化に関しては、アライドテレシスのケースでは、APのカバーエリアがもっとも広くなるように調整されるという。

従来型の無線コントローラーソリューションでは最適化の際には個々のAPを順番に最適化するため、ネットワーク全体での安定化に時間が必要だったが、Network AI技術を用いることでより早く調整を収束させることが可能になるという。

Network AIのメリット

アライドテレシスでは、この機能をスイッチやルータ/UTM、無線LANアクセスポイントの管理機能を提供するネットワーク管理ソフトウェアである「AT-Vista Manager」、および無線LANルータのファームウェアをアップデートすることで実装する予定で、提供は2017年度になるという。

同社は100~150規模のAPを設置するケースに最適だとしており、病院、スタジアム、倉庫/工場などでの利用を想定している。

また、同社は今後、APの故障時には予備機が自動的に利用可能になる、自立型無線LAN冗長構成のしくみも導入する予定だという。

自立型無線LAN冗長構成