オハラは8月24日、-30℃で駆動する全固体リチウムイオン電池の試作に成功したと発表した。

同社が試作に成功した全固体リチウムイオン電池は、固体電解質にオハラの酸化物系固体電解質「LICGC」、正極および負極に酸化物系材料を用い、粉末シートを積み重ねた上で、焼結により作成された。一般的に全個体電池は界面抵抗が大きく、中でも酸化物系の無機固体電解質を用いたものは低温下の特性が著しく低下するという課題があるが、これに対し電池を積層構造化することで、緻密かつ効率的な構造を持つ全個体電池を実現した。

この全固体リチウムイオン電池は、一般的な小型電子機器向けに使用される液式リチウム電池では駆動が難しい-30℃の低温下でも駆動の実証に成功。一方、電解液や一部の全固体電池で使用される金属リチウムを使用しないため、200℃の高温環境でも燃えず、著しい変質劣化も示さないという。また、大気中で安定している酸化物系材料で構成されるため、硫化物系無機固体電解質を使用した全固体電池に比べ、安価な工程構築が可能だ。

オハラは今後、酸化物系固体電解質「LICGC」の固体電池への採用を推進する。今回開発した全固体リチウムイオン電池は、小型電子機器に搭載されている電解液を用いたリチウムイオン電池との置き替えが期待されるとし、2019年の電池部材としての採用を目指すとしている。

透明樹脂ラミネートでパッケージした積層型全固体リチウムイオン電池

積層型全固体リチウムイオン電池の断面構造をとらえた電子顕微鏡写真