JR北海道は17日、石勝線新夕張~夕張間(16.1km)の鉄道事業廃止を夕張市長に正式に申し入れたと発表した。廃止時期については今後の協議を踏まえ、改めて提案するとのこと。

清水沢~鹿ノ谷間にある稚南部トンネル。使用開始から100年近く経過し、老朽化が激しい(JR北海道提供)

現在の石勝線は南千歳~追分~新夕張~新得間を結び、札幌駅から帯広・釧路方面の特急列車が走行する区間と、途中の新夕張駅から夕張駅までを結ぶ支線からなる路線。このうち、追分~夕張間は1892(明治25)年、夕張炭山で産出される石炭輸送を担うため開業した。

室蘭港への石炭輸送で活況を呈したとのことだが、その後の石炭産業の衰退や自動車の普及で需要が大幅に減少し、1972(昭和47)年に急行列車が廃止に。1981年に新規区間が開業して現在のルートとなり、名称を夕張線から石勝線へ改めた後も、支線では1990(平成2)年に貨物列車が廃止となっている。

新夕張~夕張間では、1日1kmあたりの輸送人数を示す輸送密度が、JR発足時(1987年度)の1,129人から2015年度には118人となり、10分の1に減少。営業収支も、1,400万円の営業収入に対して約2億円の経費がかかり、差し引き年間約1億8,000万円の赤字となっている(2014年度実績)。その上、使用開始から100年近く経過したトンネルや橋りょうなどの土木構造物があり、今後も長く列車運行を継続するためには巨額の工事費用が必要になる見込みだという。

こうした状況の中、夕張市長の鈴木直道氏は8月8日、JR北海道に宛てて「夕張市として、どのような交通体系が最良であり、効率的で持続可能なものかを一緒に考えていただけないか」と提案。石勝線を鉄道として今後も維持することが事実上困難である現実を踏まえ、持続可能な交通体系を地域に構築したいとの方針はJR北海道の考えとも一致することから、今回の申入れに至った。

なお、当該線区には並行して路線バスが運行されており、地域の生活の足として定着。鉄道が上下合わせて1日10本の運行に対し、路線バスは新夕張~南清水沢間で上下11本、南清水沢~夕張間で上下20本運行されている。