半導体市場調査企業である米IC Insightsは8月15日(米国時間)、2016年上半期の世界半導体売上高ランキング・トップ20および第2四半期売上高データを発表した。IC Insightsのランキングは、他の調査会社のランキングとは異なり、ファウンドリを含んでいる。これにより、ファウンドリの生産規模を把握できるが、ファウンドリ売上高と製造委託元企業の売上高をダブルカウントすることとなるため、世界市場の総売上高は水増しとなっている。IC Insightsの顧客の多くは、半導体装置・材料メーカーであり、彼らにとってファウンドリの生産規模を把握することは、装置・材料の売り込みの観点から重要である。そのため、これらの顧客の要望により、ファウンドリを含むランキングを作成している。

なお、売上高統計には、「全IC売上高」、「全O-S-D(イメージセンサや半導体レーザーなど光デバイス、半導体センサ、トランジスタ・ダイオードなどのディスクリート半導体素子)売上高」、「全半導体売上高(上記2つの合計)」を含んでいる。

2016年上半期のトップ20社中、米国に本社を置く企業が8社、日本(東芝、ルネサス エレクトロニクス、ソニー)が3社、台湾が3社、欧州が3社、韓国が2社、シンガポールが1社と、代表的な半導体企業は、地球上に幅広く分散している。トップ20社を業態別にみると、IDM(設計から製造・販売まで行う垂直統合企業)が11社、ファブレスが6社、ファウンドリが3社(台湾TSMC、UMC、米国GLOBALFOUNDRIES)となっている。

トップ20社中、7社が2ケタ成長

トップ20社の2016年第2四半期総売上高は第1四半期に比べて7%増加しており、昨年来マイナス成長を続けてきた半導体産業の業績がやっと好転してきているように見える。トップ20社のうち、7社が2桁成長とげ、マイナス成長だったのはIntelとルネサスの2社のみだった。また、13社が半期30億ドルの売上高で、ランキングトップ20に入るには、18億6000万ドル以上の売上高が必要である。

トップはIntel、ファブレストップはBroadcom

トップ20社を順に見ていこう。1位から3位までは2015年通年の順位と変わりない。2位の韓国Samsung Electronicsおよび3位の台湾TSMCの第2四半期売上高はともに前期比11%増加したにもかかわらず、トップIntelはマイナス1%と、PCの凋落、モバイルへの参入失敗から未だに抜け出せずにいる。4位は今までいつも世界1のファブレス企業、米国Qualcommの定位置だったが、今年に入り、第1四半期以降、シンガポールに本社を置くBroadcomに取って代わっている。同社は、Avago Technologiesに買収・合併されたが、企業名としてはBroadcomを採用したファブレスであり、Avagoの売り上げが上乗せされたため、4位となった。

9位に上昇した東芝、ルネサスは16位に下降

ビッグデータを保存するためNAND型フラッシュメモリの需要が増加しており、東芝は2016年通期の10位から1つランクを上げ、日本企業で唯一トップ10に踏みとどまっっている。一方、ルネサスは、ランクを落とし続けており、2016年上半期の順位は16位にまで落とし、かつて「世界3位の半導体企業の誕生」などともてはやされた面影はない。ソニーも18位へとランクを落とした。

表1 2016年上半期の世界半導体市場売上高ランキングトップ20 (ファウンドリを含む。単位:百万ドル)。表の左から、2016年上半期順位、2015年通年順位、企業名、2016年第1四半期全IC売上高 2016年第1四半期全非IC(O-S-D=光デバイス、半導体センサ、ディスクリート半導体素子)売上高、2016年第1四半期全半導体売上高、2016年第2四半期全IC売上高 2016年第2四半期全非IC売上高、2016年第2四半期全半導体売上高、2016年2四半期の対前期比成長率(%)、2016年上半期全半導体売上高 (出所:IC Insights)。注:企業名の尾末の数字/記号は(1)専業ファウンドリ、(2)ファブレス、*のAppleはTSMC/Samsungのいずれかに製造委託したカスタムプロセッサの社内消費額を示す。イメージセンサは、光学部品とモジュール化されカメラ・モジュールとして納入されているため含まれない

MediaTekが32%と最高の成長率

トップ20社のなかで、第2四半期の成長率が最も高かったのは台湾MediaiaTekで、32%と驚異の成長を遂げた。今年、世界スマートフォン市場の販売数量は、従来の2桁成長から低下し、5%程度の成長に留まると予想されているが、MediaTekはアプリケーションプロセッサを急成長する中国スマートフォーンサプライヤ(OppoやVivoなど)に供給しており、中国スマホ市場の急成長に支えられた。IC Insightsは、MediaTekの2016年通年売上高を昨年比31%増の88億ドルと予想している。

一番順位を上げたのはApple

一番大きく順位を上げたのは米国Appleで、2015年通年順位(17位)から3つあげて14位となった。同社は、自社製品向けにプロセッサを設計し、TSMC/Samsungに製造委託し、自社内で消費しており、外販は一切していない。IC Insights は、AppleのARMベースSoCプロセッサの2016年上半期販売価値(もしも外販したと仮定した場合の売上高)を29億ドルと推計している。ソニーで製図されたイメージセンサは、光学部品とモジュール化され、カメラモジュール(光学製品)としてAppleへ納入されているので、Appleの売り上げに含まれていない。Apple向けイメージセンサはソニーO-S-D売り上げとして計上されている。Appleは半導体に関して製造委託先やその額を一切公表していないので、これらはすべて部外者による推測である。

シャープはランク外へ、代わりにAMDが20位に

もしもファウンドリ3社をトップ20社リストから除くと、代わりに18位に中国本土のファブレスHiSilicon(17億1000万ドル)、19位に米国のIDMであるON Semiconductor(16億9500万ドル)、そして20位に米国のIDMであるAnalog Devices(15億8300万ドル)が浮上する。AMDの第2四半期の売上高成長率は23%と高かったのに比べてシャープのそれはマイナス13%と低下した。シャープを今月買収した台湾鴻海精密工業が、今後、半導体ビジネスをどのように扱うか注目される。