質問にチェックしていくと認知症のリスクがわかるという

超高齢社会の日本では、アルツハイマー型認知症の患者数が増加の一途にある。厚生労働省によると、2012年時点で462万人だったと考えられている認知症患者は、2025年には約700万人まで増加すると推計されている。

加齢に伴う記憶力の低下は誰にでも起こりうることだろうが、症状の初期段階で認知症を発見することができれば、適切な"対応"ができる可能性は高まる。 海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど、「パーソナリティーとアルツハイマー」に関するコラムが掲載された。単純なパーソナリティーテストをすれば、アルツハイマーの初期症状を発見できるかもしれないという。

認知症患者に典型的な記憶喪失の前に気分や態度の変化が見られるが、これが病気の初期段階だと考えられている。そのため、カナダの専門家は、アンケートを用いることで深刻な脳の病気になるリスクが高いか否かを判断できるとみている。

2016年7月にカナダ・トロントで開催された国際アルツハイマー病会議において、「パーソナリティーの変化こそ認知症の初期症状として対処すべき」とする発表があった。「動作の繰り返し」「やる気の喪失」といった症状を発見するために、35の質問からなるチェックリストが提案された。

35の質問の一部は以下のようなものだ。

■友人や家族、家庭にまつわるさまざまな活動に興味がなくなりましたか
■以前と比べて愛情・感情表現が少なくなりましたか
■以前より怒りっぽくなったり気が短くなったりしましたか
■以前より理屈っぽくなりましたか
■食べることの喜びをもう見いだせなさそうですか

このアンケートは若年層を対象とし、特に過去6カ月以上の行動の変化を重視している。上記のような状態が6カ月以上続き、以前とは異なる場合にのみ「はい」を選択。最終的なスコアを基に「認知症リスク」をジャッジするというもので、質問は「関心」「気分」「社会的適合性」などのカテゴリーに分類されている。診断基準の尺度が定まれば、アルツハイマーの兆候をより正確に予測することができる。

アルツハイマー病は恐ろしい脳の病気で、記憶喪失も病気の特徴ではあるが、不安や混乱、方向感覚の喪失なども共通して家族がよく見かける初期兆候だ。ただ、アルツハイマー病協会主任科学官のマリア・カリロ氏は、「この提案された新しいチェックリストは、疾患の新しい臨床病期を識別するのに役立ちます」と話す。

今回紹介した質問はアルツハイマー型認知症を疑う目安にはなりうるだろうが、結局のところ最後は、周囲の人の気づきが大切となってくるのは言うまでもない。友人や家族の言動に以前から明らかな変化が見られたら、しかるべき医療機関を受診するのがいいかもしれない。

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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。