東芝ライフスタイルは8月8日、白物事業譲渡後の新体制に関する記者説明会を開催。取締役社長の石渡敏郎氏が登壇し、今後の展望について語った。

東芝ライフスタイル 取締役社長の石渡敏郎氏

東芝ライフスタイルは、東芝グループにおいて白物家電事業や、テレビ・レコーダーなど映像事業を行ってきた企業。これまでは東芝の100%子会社であったが、株式の80.1%を中国・マイディア(※)に譲渡。

これにより、白物事業の開発・製造・販売・アフターサービスは変わらず東芝ライフスタイルが、映像事業については東芝100%出資の新会社「東芝映像ソリューションが担う、という新体制が敷かれた。東芝ライフスタイルは会長に顧炎民氏、取締役副社長に林南氏をマイディアから迎えている。

Midea。美的集団、ミディアなど様々な呼称があるが、今回の会見から「マイディア」に統一するという

新体制では、白物家電事業を東芝ライフスタイルが、映像事業を東芝映像ソリューションが行う

今後は40年間をひとつの目安として、東芝ブランドを継続的に運用。グループ会社の社名や会社間の関係、組織体制のほか、販売・アフターサービスを担う東芝コンシューママーティングなどとの連携もこれまで通り続けるという。

石渡氏は「東芝グループは大規模な構造改革を行ってきたが、事業の見直し自体はすでに完了した。これからは拡大プランに突入する」とギアチェンジの段階にきたことを示した。

マイディアは1968年に創業。1980年に家電産業に本格参入し、2015年には世界シェア第2位の白物家電メーカーとなった。生産拠点は中国国内の14カ所と海外の7カ所を所有。東芝とは1993年にエアコンにおける技術協力を開始して以来、業務提携を結んでいる。東芝ライフスタイルは、ブランド・人材・コア技術といった東芝の強みと、グローバル展開・製品開発力・世界的なネットワーク・品質などマイディアの持つ強みをかけ合わせていく考えだ。

今回の戦略的パートナーシップにより、短期的にはマイディアの部品調達力を生かしたコスト競争力の強化を、中・長期的には設計開発の技術共有、IoT家電の技術開発、グローバル人材の育成などのポジティブな影響を見込んでいる。

マイディアグループの概要。世界第2位の白物家電メーカーで、総売上高は228億ドルを超える。東芝グループとは1993年から協力関係にあった

東芝ライフスタイルの会長に就任した顧炎民氏。ビデオレターで「グローバル経営とはローカル経営。そのため、石渡社長以下の東芝ライフスタイルに自主経営を正式に認めている」と話した

また、マイディアのラインナップが加わることで、ハイエンドからスタンダードまで幅広い製品群を扱えること、東芝ブランドの製品ラインナップ拡充の助けとなることをメリットとして挙げていた。

東芝ブランドについては、「これまでと変わらず、東芝のロゴは引き続き東芝グループが管理し、事業の主体も東芝ライフスタイルが受け持つ。日本の消費者には安心していただきたい」としたが、「マイディアの製品をベースに、東芝の技術やブランド力、品質基準を用いた新製品を投入していく可能性はある」と、両社のパートナーシップを生かした開発にも意欲を見せた。

特に、IoT製品については「これまでに、外出先で中身を確認できる冷蔵庫など、"モノ"は開発していた。マイディアとの提携により、今後はそれをどう使うかという"コト"にまで結び付けたい」と、注力していく姿勢であることをアピールした。

取締役副社長の林南氏は、「日本におけるブランドビジネスは、東芝ライフスタイルに一本化していく。当面、日本市場にマイディアブランドの製品を投入する予定はない」と話した。

取締役副社長の林南氏

東芝のブランド力と、マイディアの技術やコスト競争力でシナジーを生んでいく考え

社員に対しては「今回の新体制は、東芝白物家電のはじまり。世界中でビジネスを展開するチャンスを手に入れたという意識を持ってほしい」とのメッセージを発信したという。現在、東芝ライフスタイルでは、冷蔵庫やクリーナーなど数十のプロジェクトをスタートさせている。

東芝ブランドの継続については「これまで通り」を、製品開発については「マイディアとの連携」をアピールした東芝ライフスタイル。質疑応答では、石渡氏の「東芝ブランドは傷ついている。マイディアとの協業で、ブランドを再生したい」という発言もあった。東芝ブランドの回復を願いつつ、まずは、2017年以降の新製品にどのように相乗効果が見られるのか、注目したいところだ。