国土交通省は7月28日、「第4回首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」を開催し、首都圏空港の機能強化の具体化について関係自治体や航空会社等の関係者間で協議を実施。関係自治体は、羽田空港機能強化に必要となる施設整備に係る工事費、環境対策費を国が予算措置することを理解し、国と関係自治体は引き続き協力して、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会やその先を見据え、2020年までに羽田空港の空港処理能力拡大の実現に取り組むとしている。

深夜・早朝時間帯以外の羽田空港国際線に関しては、年間約6万回の現状から2020年には年間約9.9万回を目指している

同協議会の関係自治体としては、茨城県副知事(代理出席: 茨城県企画部空港対策課長)、埼玉県副知事、千葉県副知事、東京都副知事、神奈川県副知事、さいたま市副市長(代理出席さいたま市理事)、千葉市副市長、横浜市副市長(代理出席: 横浜市政策局政策担当部長)、川崎市副市長、新飛行経路関係区の代表として特別区長会会長(荒川区長)などが参加した。

羽田空港の機能強化・国際線増便は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを円滑に開催すること以外にも、訪日外国人を呼びこむことで日本全国の経済活性化、首都圏の国際競争力の強化、また、国内線と国際線を結ぶことで地方活性化等を目的にしている。 そのための方法として、運用時間を限定して都心上空をゆく新飛行経路を設定すると、1時間当たりの発着回数を現行の80回から90回まで増やすことができるという。深夜・早朝時間帯以外の国際線に関しては、年間約6万回の現状から2020年には年間約9.9万回と、最大で年間約3.9万回(約1.7倍)の発着回数の増加が可能になる計算となる。

この新飛行経路は都心上空となるため、国交省は説明会を通じて騒音や安全対策も含めた今後の取り組みを説明し、一般から意見を求めてきた。なお国交省は、羽田空港機能強化により2020年までに国際線の年間発着枠が3.9万回拡大した場合、年間の経済波及効果(生産額の増加)は年間6,503億円、税収の増加は年間532億円、雇用の増加は年間4万7,295人が見込まれることを試算している。

経済波及効果(生産額増加)の試算

税収増加の試算

国交省は7月29日、羽田空港機能強化に対する取り組みとして、運用の工夫、環境対策、安全対策、情報提供に関して方策を提示している。

都内上空を飛ぶ新飛行経路に関しては、南風時の新到着経路に関する進入開始高度を当初の計画よりも引き上げ、南風時の新たな滑走路運用に係る使用便数の調整によるB滑走路からの出発機の便数の削減、北風時の新出発経路に関わる朝の運用時間の後ろ倒し(6:00~10:30から7:00~11:30へ)等、騒音影響に配慮する。現行経路に関しては、北風時の現行到着経路に係る富津沖海上ルートのさらなる活用を図るなど、騒音影響に配慮する。

南風時における滑走路運用・飛行経路の見直し

北風時における滑走路運用・飛行経路の見直し

南風時における新到着経路に関する進入開始高度の見直し

北風時における現行到着経路に関する富津沖海上ルートの見直し

環境対策として、羽田空港の国際線着陸料を航空機の重量に加え騒音の要素も組み合わせた料金体系とし、ボーイングB787やエアバスA350のような低騒音機の導入を促進する。また、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律に基づく学校・病院等の防音工事の助成制度について、その運用を弾力化していくとしている。

騒音に配慮した料金体系の導入に関して

安全対策としては、外国航空機を含め航空機の安全な運航を確保するため、安全監督等に引き続き万全を尽くすとともに、新飛行経路の運用に際しては、羽田空港に乗り入れる航空会社に対して安全対策の徹底を要請する。特に航空機からの落下物への対策について、航空会社に対して点検・整備の徹底を指導するなど、引き続き、落下物の未然防止に万全を尽くすとともに、駐機中の航空機に対し国が航空機をチェックする新たな仕組みを構築するなど、未然防止策の強化を図るという。

落下物対策に関して

これらの機能強化方策に関する進捗については、今後とも引き続き、関係自治体に情報提供を行い、ホームページや特設電話窓口の活用、市民窓口の設置などさまざまな手法を組み合わせた総合的なコミュニケーションを進め、丁寧な情報提供に努めるとしている。また、新たに騒音測定局を設置すること等により、新飛行経路の騒音影響に関する監視および情報提供を行っていく。