IDC Japanは7月21日、「国内EA(Enterprise Applications)ソフトウェア市場予測」を発表した。これによると、2015年の国内EA(Enterprise Applications)ソフトウェア市場は前年比3.4%増の4791億4300万円となり、2015年から2020年にかけて年間平均成長率(CAGR)は4.1%で成長を続け、2020年の市場規模は5853億9500万円と予測している。

国内EAソフトウェア市場の売上額予測(2015~2020年) 資料:IDC Japan

同社では、EAソフトウェア市場を、ERM(Enterprise Resource Management)、SCM(Supply Chain Management)、製造管理およびエンジニアリング・ツールであるPLM(Product Lifecycle Management)の各ソフトウェア市場で構成するものと定義している。

2015年の同市場は、2014年にPC刷新に伴うツールの入れ替え需要で市場を拡大したERMソフトウェアとPLMソフトウェアの一部にその反動が見られたが、業績が好調となった製造業を中心に原価管理や生産管理、物流管理の需要からSCMソフトウェアが好調となり、市場規模を拡大したという。

2016年は競争力強化への注力で、効率化や社内外の共創体制の構築を目指した既存システムの統合や連携強化の取り組みが増加する見込み。EAソフトウェアはオンプレミス利用が主流だったが、2015年の後半からマイナンバーなど人事情報保管も可能なセキュリティ機能が注目され、クラウド環境の利用が拡大している。

アジアなど海外への日系企業の進出が国内本社での拠点データ管理需要を生み、国内EAソフトウェア市場の促進要因になるという。しかしその需要が一巡し、海外投資へ軸を移すと見られる2019年頃から国内市場の成長率は緩やかになり、一方アジア市場はさらに成長すると同社は見ている。

今後、システム連携とデータの集約管理に適したクラウドへの移行検討が本格化するため、集約されたEAデータを分析するBA(Business Analytics)導入と、高度なセキュリティ対策も考慮したITサプライヤーによるクラウド移行支援が重要になると同社は指摘している。また、SaaSをはじめとするクラウド利用に加え、中長期での顧客のビジネス支援を考慮したサブスクリプション型のソフトウェア提供が拡大すると同社は見る。

同社ソフトウェア&セキュリティ マーケットアナリストの もたい洋子氏は、日本とアジアのEAソフトウェア市場を比較して「日系企業のグローバル進出の根底には、少子高齢化に伴う国内市場の縮小懸念があり、将来に渡る労働力確保は長期で取り組むべき最大の課題である。日本の主要産業である製造業では次世代のものづくりを目指す共創体制構築に向け、クラウドやデジタル・トランスフォーメーション(DX)の導入が活性化する。そのためITサプライヤーは、顧客との継続的な取り組みに適したビジネスモデルへの変革を、顧客社内のスキル継承やナレッジ共有も考慮して進めるべきである。アジア地域では欧米と日系ベンダーの競争激化で、新たな製造システムの先進事例が数多く生まれる可能性があり、注目すべき市場である」と述べている。