その土地の魅力を五感で味わえる宿。そんな滞在を実現させる星野リゾートの中でも、非日常感を追求したラグジュアリーホテルブランド「星のや」に7月20日、日本旅館「星のや東京」(東京都千代田区)が加わる。皇居側であり東京駅側という大手町は、歴史的にも経済的にも魅力深い土地。そんな大手町に位置する星のや東京でどんな体験ができるのか、その魅力に迫ってみた。

いよいよ「星のや東京」の扉が開く

1)コンセプトは「塔の日本旅館」

訪日外国人やビジネスユーザーの滞在も多い東京駅周辺のホテルの中で、星のや東京がコンセプトにしたのが「塔の日本旅館」。庭と平屋木造という伝統的な横の展開ではなく、地下2階・地上17階建の縦の空間に旅館の要素を展開し、塔のような高さとラグジュアリーコンパクトな空間を実現。施設のハード面や室礼のほか、高いホスピタリティとして表現される所作や振る舞い等、日本を象徴する文化としての日本旅館を展開する。

玄関先の木々を抜け、木扉をくぐり中に入り玄関で靴を脱ぐ。館内のほとんどは畳敷きでつながり、客室は畳の間、竹素材のクローゼットなど自然の素材に包まれる和が待ち受けている。玄関の縁台をはじめ、季節感が感じられる星のや東京の客室は全84室。1フロア6室のみで、コンパクトでありながらプライベート感に重きをおいた空間になっている。

館内のほとんどは畳敷きでつながっている

2)伝統の「江戸小紋」を効果的にデザイン

建物の外観は、江戸小紋のモチーフをイメージして効果的にデザインされている。江戸小紋は遠目では模様がやや分かりにくいものの、近づくと模様があでやかに浮き立ってくるのが特長だ。

江戸小紋のモチーフを全面に採用

3)和の光をベースとした照明デザイン

現代の質や、東京大手町という場所を意識しつつも、日本旅館のイメージを感じられるように、迎え入れる光、一息つく光、滞在する光、語らい合う光等の照明デザインを展開。全体的に、和の光をベースとした照明デザインで仕上げられている。外装は麻の葉をモチーフにした抜き型で覆われたファサードを、グラデーションで包むようなアッパーライトで建物を浮かび上がらせている。またエントランス空間では、どこか提灯をイメージするような立体造形を行った和紙のペンダントと、市松模様のように照明を配置した造作壁で訪れる人を向かい入れる。

プライベートな空間である客室では、落ち着きのある和の空間を演出する。部屋までの畳廊下は障子越しの間接照明を使用。室内では天井に間接照明を取り入れながら、行灯をイメージした江戸小紋の矢羽根柄スタンドライトにより、低い位置からの光で落ち着いた照明を用いている。また、吹き抜けが特徴的な露天風呂では壁面からの間接光を当て、上を見上げながら一息つける空間を作り出している。

障子を用いて優しい和の光を灯す

4)大都会にも馴染む日本の庭

星のや東京は、超高層ビルが建ち並ぶ大都市のど真ん中に、庭のような世界を持ち込みつつ、その世界自体が同時に公共の広場の一部として都市風景の拠り所となることを目指している。具体的には、4種類の帯が幾重にも敷き詰められたようなパターン、小さいけれど密度のある樹々、小舟のようなベンチや花入れのようなプランター等、これら全ての技が集結することで日本の宿としての質感を演出。なお造園に関しては、星のや京都でもタグを組んだ江戸期嘉永元年(1848)創業の老舗造園「植彌加藤造園」が、都市空間の中の日本の庭づくりに携わっている。

大都市における公共の広場として土地に馴染んだ庭を

5)「お茶の間ラウンジ」の活用方法は人それぞれ

各階には、その階の宿泊者限定のくつろぎの空間「お茶の間ラウンジ」を用意。部屋と行き来しながら自分の部屋の一部として活用できる。昼間はお茶やお菓子、夜はお酒を楽しめるよう、季節にあわせたサービスを展開。同じ階の宿泊者やスタッフと語らうもよし、読書や仕事等個人の空間として利用するもよし。

各階にセミプライベートなスペースな「お茶の間ラウンジ」を設置

お茶の間ラウンジでは飲食も可能

6)3種類の日本伝統の和室

客室はというと、定員2人と定員3人の部屋を用意。定員2人(面 積: 約50平方メートル)の客室は、「桜」と「百合」の2種類がある。桜は竹素材のクローゼットや障子が特徴的な和室で、ツインとダブルを選択できる。外観の麻の葉柄はおだやかな時のうつろいを障子に映し出し、畳ソファや布団のような寝心地のオリジナル寝具を備えている。百合はダブルベッドを用意した角部屋で、よりプライベート感を重視した滞在にオススメだ。

「百合」はダブルベッドを設置した角部屋

星のや東京で最も広い客室は、定員3人(面積: 約80平方メートル)の「菊」となる。各階の奥に位置する角部屋のため、静かなひとときを楽しめるのが特長。寝台にはシングルサイズの布団を3枚並べることができる。また、ダイニングテーブルやウォークインクローゼットも備え付けているため、連泊ニーズにも対応する。

「菊」は3人まで対応

7)あえてないスリッパと外でも着れるキモノ

客室内には、イグサの香りと畳表の感触を直接感じられるようにと、あえてスリッパのような履物は用意していない。また、滞在時には染色作家・斉藤上太郎氏によるデザインの着物を用意。着心地がいいジャージ素材を使用した滞在着は、簡単に着用できる"キモノ"で、館内の移動だけでなく大手町、皇居、神田などの散歩や、ちょっとした買い物にも利用できる。

8)夕食までは無料のお茶の時間

先に紹介したお茶の間ラウンジは24時間自由に使えるが、特にチェックイン時間にあたる15時からは、日本のお茶の時間となる。静岡、京都、愛媛など日本の茶園主が心をこめて端正に育て製茶した、お茶が無料で楽しめる。煎茶、ほうじ茶、微発酵茶、抹茶など香り高い各地のお茶を飲みながら、お菓子とともに、夕食までのひとときをゆったり過ごせる。なお、お茶の間ラウンジでは有料のお酒やおつまみも用意している。

甘味とともに日本のお茶を味わう

夜はお酒とともに

9)出発前に無料のおにぎり&コーヒーを

朝一番には、米どころの銘米で結んだおにぎりとお味噌汁を。おにぎりは、ごはんはつやつやしっとり、海苔はパリっとした状態でおいしく食べられるよう、常温で用意する。こちらもお茶の間ラウンジが会場で、無料での提供となる。また出発前には、日本の名店のコーヒーをドリップした一杯を無料で提供する。

一粒一粒をかみしめて

こだわりの一杯をここで

10)宿泊者だけが利用できる温泉

その他、施設の17階には、新たに湧き出たばかりの温泉を宿泊者限定で楽しめる露天風呂&内湯を用意。大都会の空を眺めながら露天風呂は格別だろう。また、有料のSPAリラクゼーションルームでは、ボディ、フェイス、ヘッドスパを展開。2017年春からはホリスティックケアを目指して、美と身体機能と医療を加えたアンチエイジングプログラムの開催を予定している。加えて、SPAリラクゼーションルームでは体操なども定期的に行う。

大都会のど真ん中で湧いた温泉につかる

また、星のや東京の地下1階から徒歩30秒のところにはジムスタジオがある。ジムの利用は有料だが、皇居ランも組み合わせ、運動後に温泉で疲れを癒やす、というのもオススメだ。

有料でSPAやジムスタジオも利用できる


星のや東京は1室7万8,000円~(税・サービス料10%込み、食事別)とハイクラスなホテルではあるが、同社広報によると、星野リゾートファンを中心に予約が殺到したとのこと。東京メトロ大手町駅A1もしくは地上C1出口より徒歩2分と、アクセスしやすいことも魅力のひとつだろう。グローバル展開する外資系ホテルや日本を代表するホテルが数多く存在するエリアで、星のや東京がどのような施設として周辺施設・環境に影響を与えていくのか、今後の展開にも注目したい。