2016年7月7日(現地時間)、Googleは量子コンピューターがインターネットのセキュリティ保護に用いられるTLS(Transport Layer Security)で用いる暗号化アルゴリズムを破る可能性がある、と公式ブログで警告を発した。同社のソフトウェアエンジニアであるMatt Braithwaite氏は、自社やIBM、Microsoft、Intelなどが開発を進めている量子ゲート方式の量子コンピューターと1994年に発見されたShor's algorithm(ショアのアルゴリズム)を用いることで、公開鍵暗号を解くことが可能になると説明する。

この危険性を未然に防ぐためGoogleは、量子コンピューターでも破ることができない"ポスト量子暗号"として、Erdem Alkim氏らが研究する「New Hope」をGoogle ChromeのCanaryビルドに実装した。Braithwaite氏によれば、鍵交換のプロトコルに工夫を凝らして安全性の向上を目指す。ただし、Googleは研究意図や今回の発表について「ポスト量子暗号への関心を集める」のが目的とし、New Hopeアルゴリズムを業界標準に押し上げる意図はないという。そのため、New Hopeアルゴリズムの研究が順調に進めば2年以内に終了すると説明している。

Googleは2014年9月から量子コンピューターの独自開発を開始しており、従来型のスーパーコンピューターを凌駕(りょうが)する計算力を供え、想像を超える並列コンピューティング環境の実現など、多くの期待を集めている。

Google ChromeのCanary(実験的)ビルドで実装したポスト量子暗号。 鍵交換方式として「CECPQ1」を用いている

阿久津良和(Cactus)