デジタルガレージ(DG)、カカクコム、クレディセゾンの3社は、多様な業界の企業が参画して次世代の事業を共同で創出することを目的とした、オープンイノベーション型の研究開発組織「DG Lab」を7月4日より設立したと発表。オリンピックの開催を見据えた2020年までを第1フェーズとして活動を開始した。

(左から)カカクコム代表取締役社長 畑彰之介氏、デジタルガレージ代表取締役社長兼グループCEO 林郁氏、デジタルガレージ取締役共同創業者兼MITメディアラボ所長 伊藤穰一氏、クレディセゾン代表取締役社長 林野宏氏

DG Labでは、「デザイン×データ×テクノロジー」をキーコンセプトとし、今後さまざまな事業の基盤になることが期待できる「ブロックチェーン」「人工知能」「VR/AR」「セキュリティ」「バイオテクノロジー」を重点分野として、これらの分野において高いレベルの技術を持つ国内外の投資先企業と連携し、新たなプロダクトやサービスの基礎となる研究成果を生み出すことを目指す。賛同する企業は「協賛パートナー」として参画することで、研究成果を優先的に各社の事業に利用できる。

協賛パートナーには、TIS、横浜銀行、りそな銀行、大和証券グループ、パルコ、弁護士ドットコム、アイリッジ、電通サイエンスジャム、ソニーコンピュータサイエンス研究所、講談社などが参画する予定。また、最終的には50~60社の加盟を目指している。

運営体制と協賛を想定する業種

5つの重点分野の中でも当初は特に、「ブロックチェーン」と「人工知能」に力を入れて研究開発を進める予定。ブロックチェーンについては、2016年2月にDGが子会社を通じて出資したBlockstreamとの連携を推進する。

同社は、ビットコインの基盤技術であるブロックチェーンをさまざまな用途で利用するための先進的なプロダクト開発を行っている企業だ。DG Labは、Blockstreamの技術支援を受けながら、ブロックチェーンを利用したクレジットカードのポイントやバリュー、仮想通貨のエクスチェンジシステム、地域マネー、電子マネーなどのプラットフォーム、契約執行や価値移転、権利許諾の自動化を行うスマートコントラクトの基盤技術を開発していく。

具体的な施策として、ポイントエクスチェンジのプラットフォームを例に挙げた。クレジットカードやマイルなど、大手企業だけを合わせても年間約1兆円分のポイントが発行されているが、消費者から見れば、さまざまなポイントが乱立しており、これらを個々に管理するのは難しい状況だという。また、流動性が低いことも課題となっている。一方、発行者側も交換におけるシステム構築や処理作業が高コストになっている。

これをブロックチェーンで解決しようというのが今回の施策となる。ブロックチェーンを活用したポイント交換サービスのプラットフォームを作り、さまざまなポイントを一元管理し、利便性や流通性の向上を狙う。メリットとしては、低コスト運用かつ交換対象の選択肢が広げられるほか、将来的にはポイント以外にも、仮想通貨や電子マネー、他国通貨、個人間送金などに応用できることとしている。

ブロックチェーン技術を使ったポイント交換プラットフォーム

人工知能分野については、DG子会社のBI.Garageが手がけるデータサイエンス事業への応用事例を推進していく。会見では、クレディセゾンが保有する購買・決済データと、カカクコムの持つWEB行動データを組み合わせ、ユーザーごとにカスタマイズされたコンシェルジュのようなチャットボットを例に挙げた。研究成果は、次世代のインタラクティブ・エージェントなどに応用する予定。製品比較をしている時に、ユーザーの特性を元にしたレコメンドをしたり、新製品が発表されたときに、自分が気にする点(価格/スペック)などを網羅した情報を送ってくれるようなサービスの実現を模索する。

企業が保有するデータとAIを組み合わせて価値を創出

クレディセゾンの林野社長は、「DG Labは玉手箱。今の段階では何が出てくるか分からないが、ここから新しいビジネスや既存ビジネスを変革するようなサービスが生まれると考えている」と述べた。