国交省は6月30日、羽田空港跡地第2ゾーン開発の民間事業者である住友不動産・東京国際空港プロジェクトチーム(代表企業: 住友不動産)が提案した概要を公表。7万9,879平方メートルの延床面積内に、総客室数1,704室の宿泊施設や600人収容のバンケットルーム等の複合業務施設の他、飲食・物販等商業施設、バスターミナル等を設置し、2020年6月までに全施設を開業させる。

第2ゾーン開発の外観イメージ

羽田空港の沖合展開事業等により発生した跡地第2ゾーンについては、「羽田空港跡地まちづくり推進計画」(平成22年10月、国土交通省、東京都、大田区、品川区)を踏まえ、宿泊施設等の整備・運営を行う民間事業者について、一般競争入札総合評価落札方式による公募手続きを行ってきた。

第2ゾーンの基本的な考え方としては、羽田の24時間国際拠点空港化に伴って求められる機能の早期実現を図る、国際線地区との補完的役割や一体的な土地利用、また、親水性や景観に配慮しつつ第1ゾーンや水際線との連続性を確保するとしている。対象地は国際線ターミナルに接した約4.3haで、平成29年末には隣接する道路の供用を予定している。

事業者に選定された住友不動産・東京国際空港プロジェクトチームは、平成30年4月1日から平成80年3月31日まで(対象地の一部については平成30年1月1日から貸し付け可能)の原則50年、国から空港用地(行政財産)の貸し付けを受け、宿泊施設等の整備・運営を行う。今後、平成28年7月頃に基本協定を締結、9月頃に事業協定・国有財産定期借地権設定契約書を締結し、平成30年4月1日から貸し付け開始となる。

対象地は国際線ターミナルに接した約4.3ha

住友不動産・東京国際空港プロジェクトチームの提案概要は、3グレードのホテル(154室設計のラグジュアリーホテル、644室設計のハイグレードホテル、906室設計のスタンダードホテル)を整備し、多様な宿泊ニーズに対応するとしている。これらの宿泊施設は住友不動産ヴィラフォンテーヌが運営し、ラグジュアリーホテルのブランドは外資系ホテルブランドを予定している。

専門性の高い協力会社からの協力を得て住友不動産が運営する施設としては、飲食施設や物販施設の他、バスターミナル・ステーション、おもてなしセンター、サービス業務施設、温浴施設「泉の湯」、フィットネス、業務(サービスオフィス)を予定。また、専門性の高い協力会社からの協力を得て住友不動産ベルサールが運営する施設としては、ディスカバー・ジャパン・プロムナード(アクセス通路)、バンケットルーム(兼会議室) 、グランドホワイエ、イベントホール、イベントシアターを予定している。

住友不動産・東京国際空港プロジェクトチームの提案概要

デザインコンセプトを「世界に発信する日本のおもてなし空間」と定め、日本の文化・芸術を発信するおもてなし空間を目指す。「ディスカバリー・ジャパン・プロムナード(国際線ターミナルからのアクセス通路)」では、デジタルサイネージ等により日本の歴史・文化等を発信。クールジャパンを発信し体験できるイベントホール、イベントシアター、商業等により、ビジット・ジャパンに貢献するとしている。全施設の運営・維持管理・安全を統括する「業務安全管理センター」により、施設利用者に質の高いサービスを提供していく。

24時間・4カ国語対応の「おもてなしセンター」では、全国各地のホテルや観光ツアーの予約、交通や観光等のさまざまな情報の提供、手荷物預かり等、訪日外国人のニーズ全てにワンストップで対応する。さらに、国際線・国内線ターミナルビルと第2ゾーン、第1ゾーンをつなぐシャトルバスを運行するほか、首都圏近郊の観光地へのバスターミナルを整備する。

全施設は2020年6月までに開業となる

これらの住友不動産・東京国際空港プロジェクトチームからの提案概要については、今後具体化を図っていく。同提案に対し有識者委員会からは、「同エリアは羽田空港国際線地区に隣接する希少な空間であり、利用にあたっては空港機能をサポートするとともに、周辺地域との調和を図りながら、空港の持つポテンシャルを最大限活用することが重要である点を踏まえることが重要」と指摘し、さらなる検討・工夫の必要性を求めている。

具体的には、宿泊施設規模に対して飲食および物販の施設規模は必ずしも大規模なものでなく、ピーク時における宿泊客およびその他の利用者への対応において混雑の発生が懸念されること、また、有識者等からなるユニバーサルデザイン検討会の設置に係る方針は示されているが、エレベーター等の設置提案はあるものの車いす等の利用者が移動しやすい空間形成を行う点では配慮が十分に読み取れなかった、等を指摘している。