地球から約400光年離れた誕生初期の「原始星」の周囲を、大量の有機分子がリング状に取り巻いていることを、東京大学などの研究グループがチリにあるアルマ望遠鏡で発見した、とこのほど発表した。原始星は誕生初期の恒星で、今回の観測は原始星だけでなく、太陽系の起源などを探求する手掛かりになるという。

写真 チリのアタカマ砂漠の高原に建設されたアルマ望遠鏡。2013年3月撮影(提供 東京大学大学院理学系研究科などの研究グループ)

東京大学大学院理学系研究科の山本智(やまもと さとし)教授と同大学院物理学専攻博士課程の大学院生らの研究グループは、チリの高地に建設されたアルマ望遠鏡で、へびつかい座の原始星を観測。特に原始星の周囲にあるガスの分布状態などを詳しく観測した。その結果、原始星の周囲にメタノールやギ酸メチルなどの有機分子が大量にリング状になっているのが見つかった。

これまでの観測で、おうし座にある別の原始星の周囲には、炭素系の分子が大量に存在することが分かっていた。研究グループは、これら二つの観測から、恒星や惑星の元になるガスは多様な化学組成をしていることが明らかになったとしている。

研究グループによると、星間空間で形成された有機物がどのように太陽系にもたらされたかは、太陽系や地球環境の起源を理解する上で謎だった。今回の観測成果は、太陽系の物質起源を理解する上で新しい視点を提供し、太陽系が広い宇宙の中でよくある存在なのか、特殊な存在なのかを判断する重要な鍵になりそうだという。

アルマ望遠鏡は、日本と米国、欧州などが国際協力でチリ北部にあるアタカマ砂漠の標高5千メートルの高地に建設した電波望遠鏡。総工費約1千億円のうち日本は関連施設経費を含め約250億円を負担した。直径約12メートルのパラボラアンテナ66台をつないで一つの巨大な望遠鏡のように運用する。空気中の水蒸気は天体観測の邪魔になるため、標高5千メートルの乾燥した高原が建設場所に選ばれた。 日本は国立天文台が運用を担っている。

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