フランスで子育てと政治家の仕事を両立し、教育や人種の多様性などの分野で活躍しているナジャット・ヴァロー=ベルカセムさんをご存じだろうか。2014年まで女性権利大臣を務め、現在は国民教育・高等教育・研究大臣として日々奔走しているパワフルな女性だ。このたび、そんなベルカセムさんが、G7伊勢志摩サミット関係閣僚会合のために来日。これからの高等教育のあり方について東洋大学で講演を行ったほか、学生からの質問に答え、フランスにおける女性活躍について語った。

フランスのナジャット・ヴァロー=ベルカセム国民教育・高等教育・研究大臣

女性権利大臣を務めていた時に、女性の地位向上に関して何ができるのか考えましたが、1つは女性を差別している法律を廃止することがあげられると思います。例えば過去にフランスであったような女性の投票権がなかったり、既婚女性は夫の承諾がなければ銀行口座を作れなかったりといったことを定めた法律です。

ただ、「女性は前に出てはいけない」「女性は高い地位にはついてはいけない」などの文化的な背景もあるので、女性活躍を促す法律を作っていく必要もあります。女性の政治家が出るようにクオーター制にするとか、同じ職業であれば男性と同じ給料をもらえるようにするとか、能力に応じた給料や地位が与えられる環境ができるように、制度自体にメスを入れていくことが重要です。また、女性が仕事と子育てを両立できるよう、保育園整備などの公的施策も欠かせません。

さらに男女の不平等が社会の中に存在するのは、「男性はこうあるべき、女性はこうあるべき」といったビジョンがあるためで、これを解体しなければなりません。重要なのは若いうちから、小学校のうちから実施すること。フランスで調査を行ったところ、学校の先生は、秩序がまとまらなかったときに男の子よりも女の子に厳しくしかる傾向があるとわかりました。

男の子はやんちゃでもいいが、女の子はおしとやかにしなければならないという風に先生自身が思っているからですね。そういう先入観をやめて、男の子と女の子の扱いを平等にする必要があります。またどんな職業にも就けるのだと教えていくことも大切です。例えば女の子がもっと理工系の道に進んでもいいし、男の子だって助産師になってもいいと思います。

女性の権利を守るためには、男性もそのために動かなければなりません。フランスにおいては、男性が子育てに参加しないという動きが目立っています。そして男性自身、十分に育児に参加できなかったという反省もあります。フランスの場合は離婚するカップルも多いので、このような場合にも、子どもと時間が取れるようにするのが必要です。公的施策として、男性が育児休業を取りやすくし、育児休業を取ったら後ろ指を指されるようなことがないようにしたいと思います。