富士通研究所は5月16日、主に窓口対応業務に向け、AI技術により、ユーザーの要望を正しく理解し、必要な情報を自然に聞き出しながら自律的に対話する技術を開発したと発表した。

現在、スマートフォン上でのコミュニケーション手段として、ユーザーがシステムと対話を行うためのメッセンジャーアプリケーションが身近になっているが、従来、コンピュータに対話させる場合、どのようなことを言われたらどのように対応するといった対話のためのシナリオを用意し、それに基づいて業務システムを動かすことが一般的だった。

今回開発した技術は、シナリオを用意することなく、対話システムが利用者との自律的な対話によって目的の情報を聞き出し、推奨する商品やサービスプランを提示するという業務を実現する対話技術。

富士通研究所では、同社が開発している数百万規模の大規模辞書を搭載する機械翻訳エンジンの解析技術を活用し、そこから得られた単語間の意味の関係を構造的に分析し、必要な情報を抽出する独自の発話理解技術を新規に開発した。例えば旅行業務を想定した場合、「姉のいる東京に友達と行きます」という入力文に対し、意味を正しく解析できると、「姉」は同伴者ではなく、「友達」が同伴者であることを正しく理解できるという。

また今回、東北大学大学院情報科学研究科の乾・岡崎研究室と共同で開発した、機械学習を使ってユーザーの発話の意図を判定する技術により、回答や質問、要求、意志、願望などの意図を正しく把握しながら目的の情報が得られるようスムーズに対話を継続させることができるようになったという。

例えば、「ハワイに行きたかった」は願望であり旅行の目的地を述べてはいないと判断し、「ハワイですか、いいですね。ちなみに今日はどちらへ。」と返すことで、目的地の情報を得られるように対話を継続するという。

さらに、今回新たに開発した知識型対話生成技術では、LODなどの外部データベースを活用した1千万件規模の知識情報を適宜織り交ぜることが可能で、親しみのある自然な対話システムを構築できるという。

業務指向型対話システムの概要図

本技術については、東京海上日動火災保険が一部の顧客対応業務において技術検証を行っており、富士通研究所では今後、本技術の効果検証を進め、2016年度中に富士通が提供するソリューションへの実装を目指すという。