ソニーは4月28日、2015年度決算概要の発表に際し、熊本地震で被災したソニーセミコンダクタマニュファクチャリング 熊本テクノロジーセンターの状況などの説明を行い、5月末をめどにウェハ工程の生産再開を予定していることを明らかにした。

熊本地方にはソニーセミコンダクタマニュファクチャリングを中心に約3500名が在住しているが、避難所へ避難している人はいるものの、人的被害はなかったという。また、九州地方全体で熊本のほか3つの工場があり、4月14日の前震発生時に長崎ならびに大分テクノロジーセンターは一時的に操業を停止していたが、すぐに稼働を再開している。

ただし同社のデジタルカメラなどのイメージセンサやプロジェクタ向けキーデバイスの基幹工場として位置付けられている熊本テックに関しては、本震の震源地から約12kmほどのところにあったこともあり、4月28日時点でも生産活動を停止している。

熊本テックの工場は2層構造で、下層のクリーンルームがウェハ工程の生産ライン、上層が組み立てなどの後工程およびカメラモジュールなどの生産ラインに分かれているが、調査の結果、ウェハ工程の設備やクリーンルームについては損傷が確認されなかったものの、上層ではクリーンルームや生産設備などに損傷があることが確認されているという。そのため、ウェハ工程については4月27日より設備の立ち上げを開始し、5月末をめどに生産を再開する予定としているが、カメラモジュール生産工程については、装置ごとに検証を行っている段階にあるとしている。

また、半導体部品として見た場合、完成品についての被害は限定的としているが、仕掛品については状況を確認中としており、事業分野全体として復旧費用や地震対策費用などが発生するとしている。さらに、地震保険は契約していたものの、補償額は最大200億円とのことで、地震で生じる被害のすべてを賄えない可能性があるとするほか、生産停止が長引くことにより、デバイス分野およびイメージセンサ分野における機会損失が生じる可能性、ならびにサプライヤの工場も被災地域にあり、部品供給にも支障が出る可能性があり、モバイル・コミュニケーション分野、ゲーム&ネットワークサービス分野、およびホームエンタテインメント&サウンド分野についても影響がおよぶ可能性があるとしており、2016年度のエレクトロニクス5分野、ならびに全社の通期業績の見通しを現時点での公表を控え、5月24日に改めて公表する予定とする。

熊本テックの概要。2層構造となっており、熊本地震では1層目のウェハ工程の損傷は確認されなかったものの、2層目の組み立て、カメラモジュール工程のクリーンルームや生産設備などに損傷が確認されたという

なお、同社では、熊本地震により2015年度のモバイル・コミュニケーション分野の業績にも影響をおよぼす可能性があるとしているほか、デバイス分野におけるカメラモジュール事業の業績悪化による596億円の減損発生について、イメージセンサの需要数量の読み違えによるところが大きく、現在、受注は回復しているものの、本格的な回復は2016年下期になるとの見通しを示している。

デバイス分野の2014年度および2015年度の業績。2015年度の営業損益については、スマートフォン市場の減速による出荷数量の減少のほか、工場の稼働率の減少(なお同社は熊本地震以前より、月産8万7000枚体制から月産7万枚体制へと調整を行っていた)によるコスト増がイメージセンサで生じたほか、カメラモジュール生産の自動化によって仕様変更への柔軟さが喪失するといった課題や、スマートフォン向けバッテリの基本性能が競合よりも劣っていたことによる採用数の減少などに起因する減損の発生などにより286億円の損失となった