米国の宇宙開発企業スペースXと米国航空宇宙局(NASA)は4月27日(現地時間)、火星へ向けて無人宇宙船「レッド・ドラゴン」を打ち上げる計画を発表した。宇宙船の火星までの飛行や、火星地表への着陸を試験する計画で、早ければ2018年にも打ち上げたいとしている。実現すれば火星への有人飛行に向けた大きな一歩となる。

火星への飛行で使用されるレッド・ドラゴンは、現在スペースXが開発中の有人宇宙船「ドラゴン2」を、火星への飛行に合わせて改造したもので、同じく同社が開発中の超大型ロケット「ファルコン・ヘヴィ」で打ち上げられる。

ドラゴン2はもともと、地球以外の天体への飛行も可能なように造られている。同社のイーロン・マスクCEOは「ドラゴン2は、太陽系のどこにでも着陸することができる能力をもっています。このレッド・ドラゴンの飛行は、その最初の試験飛行となります」と述べている。

スペースXは以前から火星への有人飛行を行う構想をもっており、またNASAも2030年代に有人火星探査を行う計画をもっていることから、両者の利害が一致した形となる。スペースXは宇宙船が火星に着陸する際に得られるデータを提供し、NASAはその見返りとして、同社に対して技術的な支援を行うという。また、レッド・ドラゴンにNASAの観測機器などを搭載する計画もあるという。

またマスク氏は、今年9月にメキシコで開催される第67回国際宇宙会議(IAC)において、火星への有人飛行に関する検討について明らかにすると予告している。今回の発表では、この将来の火星への有人飛行計画についても触れ、「2018年のレッド・ドラゴンのミッションは、今年の後半に明らかにする有人火星探査計画の、実現に向けた第一歩になります。火星に大きく重い物資を送り込むためには、レッド・ドラゴンのような着陸方法が必要であり、その技術の実証を行いたいと考えています」と語っている。

有人火星探査をめぐっては、NASAも現在、2030年代の実現を目指し、超大型ロケット「スペース・ローンチ・システム」と宇宙船「オライオン」の開発を進めているが、スペースXとの協力が進むことで、計画の変更や、より早い時期に人類が火星に降り立つ日がやってくる可能性もある。

火星に着陸するレッド・ドラゴンの想像図 (C) SpaceX

レッド・ドラゴンを打ち上げる「ファルコン・ヘヴィ」ロケットの想像図 (C) SpaceX

レッド・ドラゴン

レッド・ドラゴンは、現在スペースXが開発中の有人宇宙船「ドラゴン2」を改造し、火星への飛行に耐えられるようにした機体となる。

スペースXはすでに、無人のドラゴン補給船の開発に成功し、運用を行っている。これまでに8機のドラゴンが国際宇宙ステーションへ向けて物資を輸送し、また宇宙実験で生み出された成果物などを地球に持ち帰ってきている。

ドラゴン2は、そのドラゴン補給船を基に開発中の有人宇宙船で、2017年に無人での初飛行と、有人での初飛行の実施を計画している。また今年の後半には、故障したロケットからの脱出を模した試験の実施も予定している。

ドラゴン2の特長は、パラシュートを使わず、自身がもつ小型ロケット・エンジンを噴射することによって着陸できるシステムをもっていることにある。これにより、大気のない、あるいは薄い天体にも着陸することができ、また大きな質量の物体を安全に送り込むことも可能となる。着陸用の小型ロケット・エンジンの試験は以前から続けられており、最近では実際に宇宙船から噴射し、空中に静止したり、着陸できるかどうかを確認したりといった試験が続けられている。

ドラゴン2、レッド・ドラゴンはロケット・エンジンを噴射しながら着陸することができる (C) SpaceX

火星に着陸したレッド・ドラゴンの想像図 (C) SpaceX

【参考】

・SpaceXさんのツイート: "Planning to send Dragon to Mars as soon as 2018. Red Dragons will inform overall Mars architecture, details to come https://t.co/u4nbVUNCpA"
 https://twitter.com/SpaceX/status/725351354537906176
・Elon Muskさんのツイート: "Dragon 2 is designed to be able to land anywhere in the solar system. Red Dragon Mars mission is the first test flight."
 https://twitter.com/elonmusk/status/725364699303301120
・Elon Muskさんのツイート: "But wouldn't recommend transporting astronauts beyond Earth-moon region. Wouldn't be fun for longer journeys. Internal volume ~size of SUV."
 https://twitter.com/elonmusk/status/725365200098988032
・Exploring Together | Deputy Administrator Dava Newman
 http://blogs.nasa.gov/newman/2016/04/27/exploring-together/
・https://www.nasa.gov/sites/default/files/atoms/files/spacex_ccsc_saa_modification_1_-_redacted_1.pdf