婦人科専門医・松村圭子先生が講演

ワコールなどはこのほど、大人の保健体育「婦人科専門医に聞く、30~40代ママのための美と健康」と題したセミナーを開催。成城松村クリニックの松村圭子院長が、30~40代の子育て女性に向けて年代特有の体の変化にどのように向き合うべきかアドバイスした。

「脳への負担」がホルモンの分泌バランスに影響

はじめに松村先生は、役割が異なる2つの女性ホルモンについて解説。「生理が終わってから分泌が増えるのはエストロゲンというホルモン。排卵前にピークを迎えます。一方で、排卵後に分泌が増えるのがプロゲステロンというホルモンです」。この分泌を規則的に繰り返すことで、毎月生理がやってくるのだという。

「エストロゲン」は女性の美と健康を保つホルモンで、主な役割はコラーゲンの生成。髪の成長を促したり、血管と骨を強くする働きもある。また妊娠・出産に耐えられる程度の皮下脂肪を維持し、内臓脂肪はためないように働いてくれる。

そのため老化に伴いエストロゲンの分泌が減少すると、骨折や脳卒中・心筋梗塞、内臓脂肪がたまることによるメタボになりやすいとのこと。「若いうちにいかにエストロゲンをうまく働かせるかが大切だ」と語った。

一方「プロゲステロン」は、妊娠の維持のために働くホルモン。生理前にむくんだり、胸が張ったり、頭痛や便秘に悩まされたりするのは、赤ちゃんのために水分や栄養分をためようとするプロゲステロンの機能があるためだ。

この2つのホルモンがバランスよく分泌されることで女性の健康が保たれるわけだが、ホルモン分泌は卵巣が勝手に行っているわけではなく、「脳」がコントロールしているという。「脳の視床下部が、下垂体という部分に命令を下す。さらに下垂体が卵巣に命令を下してホルモンが分泌される」とのこと。脳の視床下部はストレスや極端なダイエット、不規則な生活でダメージを受けやすい。卵巣の機能が正常に働く20~30代で不調が起こるということは、これらの原因で視床下部に負担がかかっているということなのだ。

更年期の症状についても、脳の働きが大きく影響している。この時期は脳の機能が元気でも、卵巣機能が衰えてホルモンを出せないという事態が発生。ホルモン分泌を促す視床下部は、命令を出したにも関わらず、卵巣がホルモン分泌をしないことでパニック状態に陥る。視床下部は自律神経もコントロールしているため、自律神経に対しても影響が及び、ほてりやイライラ、多汗などの症状が出てくる。

出産回数の多い・少ない女性がかかりやすいがんは?

また女性の健康は、出産回数にも大きく影響を受ける。「昔は子どもを6~7人うむのが当たり前だったが、今は1~2人。妊娠・出産の回数が少なく生理の回数も増えるため、子宮や卵巣を休ませる暇がない」と松村先生。婦人科系の病気のなかには女性ホルモンの過剰な刺激により発症するものもあり、現代女性というだけでリスクが高まるという。

例えば日本人女性の12人に1人がかかるといわれている「乳がん」のリスク因子は、遺伝や年齢条件、肥満などに加えて、(1)初潮が11歳以下、(2)閉経が55歳以降、(3)初産が30歳以上、(4)30歳以上で出産の経験がないなど、妊娠・出産、生理に関することが多くを占める。加えて、最近日本人女性に増えているがんの1つ「子宮体がん」も女性ホルモン・エストロゲンが深く関わっている。エストロゲンの過剰刺激が一因となる子宮内膜増殖症という病気を経て発症するからだ。

一方、婦人科系のがんの中で乳がんに次いで発症頻度が高い「子宮頸がん」は、性交渉で感染する「ヒトパピローマウイルス」が要因。そのため30代の子持ち女性がかかりやすい。「性行動の変化などが影響し若い世代の発症が多い上、妊娠・出産回数が多いほど、性交渉の回数が多く感染の機会が増えるといえる」とのことだ。

最後に松村先生は、規則正しい生活と健康的な食生活、そして何よりもストレスをためないことがバランスのとれたホルモン分泌を促すとアドバイスしてくれた。「気になることは明日に棚上げする」「お気に入りの香りでリラックスする」「今日あったいいことを3つ挙げる」など、寝る前の心がけ1つでも効果があるという。家事に仕事、子育てに追われ日々がんばっているママたち。たまには自分の心と体をいたわってあげてみてはいかがだろうか。