読売広告社とリサーチ・アンド・ディベロプメントはこのほど、共同でシニア層に関する研究を実施。シニア層の最新動向にかかわるデータを収集・分析した結果を「YOMIKOシニア白書」として発表した。

50代は消費拡大も、65歳以上では頭打ちに

「シニア層世帯主年代別の家計消費支出の将来推計」

今年発表された最新の総務省・全国消費実態調査の結果によると、日本の家計消費全体に占めるシニア世帯の消費のシェアは、2014年時点で世帯主が50歳以上で67.6%と全体の2/3以上を占め、2020年過ぎには7割を超えると推計されている。

一方、世帯主60歳以上では2030年頃までは横ばい傾向となり、また、団塊世代が今後加わる世帯主が70歳以上の世帯の消費シェアは、2020年前半までは急上昇するもののその後横ばいで推移することが見込まれる結果となった。

続いて、2014年のGDPの家計最終消費支出額(暦年名目値・ 約241.6兆円)をベースに、 人口・世帯動態の変化のみを反映した家計消費支出額・年代別概算値を試算したところ、世帯主50歳以上では2020年年代には一時170兆円を超えるもののその後減少に。

一方、世帯主60歳以上や65歳以上の世帯の家計消費支出の総額は概ね横ばいで推移すると予想。60代を中心としたアクティブなシニア世帯の消費拡大の頭打ち傾向が出てくることがうかがえる結果となった。

増加傾向にあったシニア消費が、2015年から低下

「最近のシニア層世帯主年代別の家計消費支出動向」

次に、年報の世帯主年代別の各年平均の家計消費支出額を見ると、2012年から2014年にかけては55歳以上のシニア世帯ではいずれも増加傾向が続いていたが、今年2月に発表された2015年平均速報では低下傾向にあることが判明。また、二人以上の世帯で「世帯全体の消費支出額」が最も高いのは、世帯主が50代前半前後の世帯で、それ以上の世帯では年代が上がるほど低下傾向が見られたが、「一人あたりの消費」ではまた別の傾向も。

家計調査の2015年平均速報をベースに、二人以上の世帯の「世帯員一人あたりの消費支出額」を算出してみたところ、最も高い数値を示したのは、世帯主の年代が50代後半から60代後半までだった。

また、世帯主70代以上の世帯ではやや低下傾向が見られるものの、世帯主が80代前半までは、子供との同居が多い子育て世代である世帯主が40代以下の世帯よりもはるかに高い水準となっており、シニア世帯では、子供の独立等により世帯人員が少なくなることで世帯全体の消費額は低下していくものの、世帯員一人あたりの消費水準は、若い世代よりもはるかに高いポテンシャルを持っていることがうかがえた。

要介護シニア、15年前から2.79倍増の608万人

「要介護/アクティブシニア高齢者人口の将来推計」

厚生労働省の「介護保険事業状況報告」および「介護給付費実態調査」によると、平成27年4月度の要介護認定者は608万人となり、平成12年からの15年間で2.79倍に。また、要支援を含む要介護の認定者割合(認定率)は、後期高齢者となる75歳以上で急激に増加し、女性では80代後半に、男性では90代前半には過半数を占める認定率となっている。

一方、介護不要である「アクティブシニア」の高齢者人口は、2015年(2,795万人)から2020年(2,887万人)にかけて100万人以上増加するものの、その後は減少に転じて2,800万人を挟んだ増減を繰り返されると予想。2020年以降の15年間に増える高齢者は要介護シニアばかりという時代になるという。

65歳以上医療費、抑制しなければ2040年には48兆円に

「高齢者医療費および国民医療費の増加・将来推計」

厚生労働省が2015年10月7日に発表した2013年度の国民医療費によると、国民一人当たり平均の年間の医療費総額は31万円となり、年齢5歳階級別でみると、後期高齢者となる70代後半は78万円、80代前半は93万円、85歳以上では105万円とのこと。

そこで、2014年度以降も2013年度の一人あたり医療費を増加させずに凍結するとした仮定で人口変動要因のみで試算(A)したところ、高齢者医療費の今後の増加は最大5兆円程度にとどまり、国民医療費の総額も人口減少により2030年代には減少に向かうという予想に。

しかしながら、一人あたり医療費は毎年1~2%程度の増加傾向が続き、増加率がこのままのペースで継続すると仮定して人口変動要因を加えて推計(C)すると、2015年で25兆円程度である65歳以上の高齢者の医療費は、2030年に37兆円、2040年には48兆円と2倍近くに増加し、国民医療費全体も70兆円に達すると予想される結果となった。(「読売広告社、リサーチ・アンド・ディベロプメント」試算・推計)