東京工業大学(東工大)は4月25日、新しい二次元材料である二硫化ハフニウム(HfS2)を用いたMOSトランジスタを開発したと発表した。

同成果は、東京工業大学 工学院 電気電子系 宮本恭幸教授、理化学研究所、岡山大学らの研究グループによるもので、3月1日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

二次元材料は原子レベルの平坦性・厚みを実現可能であり、その状態でも高い移動度が期待できる。もっとも有名な二次元材料であるグラフェンは100000cm2/Vs以上という高い移動度が予測されているが、バンドギャップを持たないことから、LSI素子としては消費電力の削減に課題がある。そこでバンドギャップを有する二次元材料が注目を集めており、特にその代表として二硫化モリブデン(MoS2)が研究されているが、電子移動度が理論上あまり高くないという問題があった。

今回、同研究グループはHfS2の電子デバイス応用に適した物性予測に着目。HfS2は遷移金属ダイカルコゲナイドと呼ばれる二次元結晶群に属しており、理論予測では単原子層の厚さ(約0.6nm)において1800cm2の電子移動度と1.2eVのバンドギャップが報告されている。これらは代表的な半導体材料であるシリコンの物性値を上回っており、電子デバイス材料として優れた性質を1nm以下の厚さで実現できる可能性を示している。

同研究グループは、スコッチテープを用いた機械的剥離法により、数原子層の厚さを持つHfS2薄片を基板上に転写する実験を行い、原子間力顕微鏡により評価したところ、2~10原子層程度の厚さをもつ薄片を確認。これら薄片上に金属電極を形成し、裏面半導体基板をゲート電極としたMOSトランジスタ構造を作製した。電流電圧特性では良好な飽和特性を持つトランジスタ特性を確認し、ゲート変調による電流のオンオフ比も104が得られたという。

さらに大きなゲート容量により、低い電圧で多くの電子を発生させ、高電流での動作が期待される電解質ゲルをゲートとした電気二重層トランジスタと呼ばれる構造を用いた特性評価を行ったところ、オン/オフ比105を維持しつつ、従来の遷移金属ダイカルコゲナイドを上回る電流密度が得られた。同研究グループによると、これはHfS2のもつ電子デバイスとしての優れた特性を示唆する結果であるという。

今後は、HfS2表面を適切に保護するとともに電極との接触を改善することで、電解質電極と同等の性能を固体ゲート絶縁膜を用いて実現し、超低消費電力デバイス実現へ向けた取り組みを行っていくとしている。

今回作製されたMOSトランジスタ構造