さいたま市は2016年から、祖父母世代による孫育てを円滑にする目的で「さいたま市祖父母手帳」の配布を開始した。「昔と今の子育て方法の違い」を図でわかりやすく説明したり、祖父母世代・親世代にアンケート調査をしてわかった「気遣いがほしかったこと」を紹介したりしている点が特徴で、好評を博しているという。
核家族の割合高く、求められる孫育て
「さいたま市祖父母手帳」は、2016年1月4日から同市内の公共施設などで配布されているもの。主な内容は、「子育ての新常識」「親世代・祖父母世代のつきあい方のヒント」「地域で求められる祖父母世代の力」となっている。担当者によれば、政令市の中でも核家族の割合が高いという同市。「子育て家庭における家事・育児の協力者は少ない。一方で祖父母世代には、時間的、経済的にゆとりのある方もいらっしゃるので、自分の孫、地域の子どもの育児に積極的に関わってほしかった」と発行の理由を語ってくれた。
市によれば、同様の趣旨の冊子は岐阜県や広島県、横浜市などでも発行されているとのこと。しかし中でも同手帳は、「親世代・祖父母世代の生の声」を重視している。手帳を作るにあたって市在住の両世代に対してアンケートを行い、共に育児に関わる中で「うれしかったこと」「気遣いがほしかったこと」などを調査。結果として出た意見をもとに、「親の子育ての方針をまずは認めよう」「親の子育てを否定せず、まずはほめよう」「現代の子育て方法を知ろう」と祖父母世代に呼びかけている。
さらに、両世代の子育ての常識におけるギャップをわかりやすく紹介。例えば授乳に関して「昔: 3時間おきに授乳するのがいい」「今: 母乳の場合は、赤ちゃんが欲しがったら授乳する」など、違いを具体的に教えてくれるのだ。
直接言いづらい親世代「渡せてよかった」
同手帳は当初1万部が用意されていたが、その後、さらに2万冊の増刷が決定。全国各地から問い合わせも相次いでいて、好評を博しているという。市外の住民からは「自分が住む自治体にもほしい」という声、祖父母世代からは「今の子育て方法を知ることができてよかった」との感想が寄せられた。また、子の祖父母に手帳を渡すことで「直接言いづらかったことを伝えられてよかった」と感謝の言葉を述べる親もいたとのことだ。
「さいたま市民のために作られたもの」としながらも、「電子書籍版」や「PDF版」については市のホームページから自由にダウンロードして利用することができる。祖父母も親も子どもたちを大切に思う気持ちは同じ。互いの理解を深め、子育ての協力関係を円滑に築いていきたいものだ。