FlexTech AllianceのPresident and CEOを務めるMichael Clesinski氏

SEMIジャパンは4月20日、都内で会見を開き、2015年10月に戦略的パートナー協定を締結し、SEMIの一員としての活動を開始したFlexTech Allianceに関する説明を行った。

FlexTech Allianceは、有機半導体を中心としたフレキシブルエレクトロニクスと、従来のシリコンを中心とした半導体技術を組み合わせた「フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(FHE)」の認知向上と、同分野の研究開発支援、人材や技術交流、技術者教育などを使命に2008年より活動を続けてきた。現在、全世界で約70社が加盟しており、日本からも富士フイルム、コニカミノルタ、デュポン帝人など5社が参画している。

FlexTech AllianceのPresident and CEOを務めるMichael Clesinski氏は、「これまで半導体やFPDはプロセスや基板サイズを進化させることで付加価値を高めてきた。しかし、そうした従来技術が頭打ちとなりつつある一方で、有機半導体の研究が進んだことによる柔らかな紙や布、ラップなどの上に回路を構成することが可能となってきており、その実用化に対する期待が高まってきている」とフレキシブルエレクトロニクス(プリンテッドエレクトロニクス)への注目が高まっていることを強調。ただし、現在の技術で、すべてをフレキシブルエレクトロニクスで実現するのは困難であり、シリコン半導体と組み合わせたFHEが現実解として浮上してきているとする。

とはいえ、フレキシブルエレクトロニクスは従来の半導体の製造工程とは異なるプロセスが入ってくることとなる。その最たるものがロールtoロールを用いることが可能になる点であり、チップ実装の技術もそれに合わせたものへと変化していく必要がでてくる。「FHEの製造上のチャレンジとして、どういった製造工程が試作や量産として最適なのか、といったレベルから進めていく必要があり、半導体製造装置や材料企業が多く参画しているSEMIと組めたことは非常に有意義である」とする。

フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクスの概要。現状、すべての回路をフレキシブルで実現しようとするのは現実的ではない。そのため、シリコン半導体と組み合わせて、半導体の用途を拡大しようと思うと、必然的にハイブリッドを選択する必要がでてくる

一方、SEMIでも「SEMI 2020」という5カ年計画を2015年よりスタートさせており、対象範囲をIoTやシステムインテグレーションなどへと広げようと模索を行っている。そうした中、将来技術に関するアンケートを会員企業などに実施した結果、フレキシブルエレクトロニクスへの注目がかなり高かったということもあり、今回のFlexTech Allianceとの連携は今後のSEMIとしての取り組みを後押しするものとなるという考えのようだ。

有機半導体技術を活用して、フィルム上に回路基板を構成する研究などは日本でも積極的に進められており、直近でも4月16日に東京大学の染谷隆夫教授らの研究グループが極薄の有機LEDを開発したという研究報告が米国科学誌「Science Advances」に掲載されたほか、産業技術総合研究所や田中貴金属もプラスチック基板上に高品質な銀配線を実現する技術を4月20日に発表するなど、一定の存在感を有しており、今後の半導体産業のドライバの1つになる可能性は高い。

FHEの例。左がメディカルセンサで、皮膚に貼り付けることで、患者の体温や心拍などの測定を実現する。右はガラス基板の上にバッテリー(容量5V)などを形成したもので、サイズは名刺2枚ほどだという

そのためSEMIジャパンでも、2016年12月14日~16日に開催予定の「SEMICON Japan 2016」内にて行われるイベント「World of IoT」にてFHEエリアを設置する予定とするほか、技術説明などを行う「TechSTAGE」にてFHEのセミナーを実施する予定だとしており、積極的に国内産業界に向けて、FHEの普及促進を図っていく姿勢を示している。