富士通は4月15日、「Fujitsu Technology and Service Vision」の2016年度版を策定し、発行した。この中で、デジタル技術をビジネスの現場や中核的なプロセスの中に取り入れることで、企業の競争力の強化に加え、ビジネスの成長を導いていく独自のアプローチを提言する。また、デジタル化に伴う課題解決を新たなデジタル技術と既存のITシステムを連携させる実践的な方法についても述べている。

「Fujitsu Technology and Service Vision」

Fujitsu Technology and Service Visionは、2013年4月の初版発行以来、毎年改版を重ねており、同社ビジョンの中心的な考えはデジタル技術で人をエンパワーする(力を与える)ことにより、ビジネスや社会の価値を創出することだという。このアプローチを「ヒューマンセントリック・イノベーション」と呼び、デジタル革新を実現する最も有効な方法と位置付けている。

2016年度版ではデジタル革新と新たなデジタル化された経済、デジタルビジネス・プラットフォームの3点を提言している。デジタル革新はヒューマンセントリックなアプローチが鍵となるという。

企業が価値を生み出す方法を変革し、デジタル化され、つながった世界(ハイパーコネクテッド・ワールド)では人の創造性、情報から導かれるインテリジェンス、モノやプロセスのつながりという3つの要素を組み合わせることから価値が生まれると想定。

同社は2015年に300以上のProof of Concept(PoC)やProof of Business(PoB)と呼ばれるデジタル革新の実証プロジェクトを顧客とともに実施した。これらのプロジェクトは、主にデジタル・マーケティングや小売、スマート・モビリティ(交通)、ワークスタイル変革、フィンテックなどの領域で実施されている。

また新たなデジタル化された経済では、 これまでと異なる戦略が求められ、従来の業種を隔てていた壁が崩れ、流動的になるとしている。デジタル化された多様な製品やサービスがソフトウェア経由で接続され、情報をやりとりし、価値を提供するという。

加えて、デジタルビジネス・プラットフォームではデジタル時代における企業経営者は情報システムに対して、直接的にビジネスに貢献することを求めており、デジタル・ビジネスを実現するためにはデジタルビジネス・プラットフォームを活用することが必要だという。

デジタルビジネス・プラットフォームは、1)従業員をエンパワーし、2)データやアルゴリズムから導かれるインテリジェンスを事業運営に活用、3)企業内部のシステムをつなぎ、デジタル革新を支援するとともに、顧客、サプライヤー、パートナーとのエコシステムの形成を実現する包括的な仕組みを提供するとしている。

同社は「MetaArc」というブランドで、新たなデジタルビジネス・プラットフォームを提供しており、拡張性のあるクラウドコンピューティング基盤の上でモバイル、IoT、アナリティクス、AIなどの機能をサービスとして提供する。

そのほか、同社は既存のITシステムとデジタル技術を連携させることにより、企業における情報システムの複雑性の解消やコスト削減に貢献すると同時に、新たな知見と価値あるイノベーションの創出を支援。

さらに「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」と呼ぶ体系のもとでAIの重要な技術を研究開発し、これまで以上のブレイクスルーを実現する活動に取り組み、AI研究開発の成果をMetaArc上で提供するソリューションやサービスに組み入れていく方針だ。