矢野経済研究所が4月8日、「国内M2M市場に関する調査を実施(2016年)」を発表した。調査によると2015年度におけるM2M(機器間通信)の国内市場規模は、2014年度に対して130億円増の1620億円となる見込みだ。

国内M2M市場規模の推移と予測(累計金額ベース)

2015年度の同市場がプラス成長となった要因は、M2M回線ビジネスでの上位事業者が順調に業容が拡大したほか、ビジネス環境が整ってきたMVNO(仮想移動体通信事業者)においても多様なサービスが開始したためと、同社は見ている。一方、設備機器・監視分野や自動車関連分野ではエネルギー分野ほどの伸びを見せなかったこともあり、伸び率自体はやや鈍化する傾向にあるという。

同市場は、2016年度以降も依然としてエネルギー分野が牽引役となり、拡大基調が続くものの、今後はM2M回線あたりの単価が低下する見通しであることから、市場拡大にはややブレーキがかかり、2020年度の同市場規模は累計金額ベースで2000億円になると同社は予測している。

国内M2M市場の分野別累計回線数(2014年度末)

2014年度末の国内M2M累計回線数を分野別に見ると、エネルギー関連が410万回線・構成比27.0%で最多だった。以下、設備・機器監視(23.0%)、流通関係(20.4%)、自動車関連(17.8%)と続く。

エネルギー分野については、スマートメーター関連での需要が牽引し、回線数が増加しているという。スマートメーターの設置拡大などスマートハウス関連需要の増加や電力自由化などの追い風もあり、今後もさらに拡大すると同社は見込んでいる。

またBEMS(ビル・エネルギー管理システム)に関しても、省エネ志向の定着に加え、経済産業省がとりまとめた「ZEBロードマップ」により2030年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を実現する目標があり、これも成長要因になると同社は見ている。

また、流通分野及び設備・機械監視分野は、新たな需要が生まれる注目分野だという。流通分野では、省エネ対応のための店舗エネルギー監視やデジタル・サイネージなどのデジタル・マーケティング分野が牽引し、大手流通小売チェーン業態を中心にM2Mの浸透が進むという。さらに、品質管理などを目的とした店舗内トラッキングでも、M2Mの導入が進むとしている。

一方、ものづくり領域の製造現場などの設備・機器監視分野では、これまで工場の生産設備などへの遠隔監視や予防保全用途が中心だったが、センサー・ネットワーク・ビジネスにおいて新たな需要喚起が期待されているといい、周辺環境も盛り上がりを見せているとのこと。M2M導入事例では、テレマティクスやコネクテッド・カー用途などの自動車関連についても設備・機器監視と並び、需要が拡大すると見込んでいる。