スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「IPサイマル配信」についてです。

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サイマル配信とは、複数の放送波/チャンネルを通じ並行して同じ番組を配信することをいいます。IPサイマル配信は、同じことを電波ではなくIPネットワーク(インターネット)を介して実行します。

対象の放送サービスは映像/音声で限定されていませんが、スマートフォンに関するかぎり、2016年現在は映像系のIPサイマル配信は視聴できません。理由としては、移動端末向けの地上波を利用したサイマル配信(ワンセグ)が存在すること、Android限定ながらもテレビチューナ(ワンセグ/フルセグ)内蔵の端末が存在することが挙げられます。

そのような背景から、パソコンやスマートフォンでIPサイマル配信といえばラジオを指します。視聴にはパソコンの場合はWEBブラウザを、スマートフォンの場合は専用アプリを使うことが一般的で、民間事業者のAM/FM放送であれば「radiko.jp」、NHKであれば「らじる★らじる」という専用アプリがiPhone/Android向けに提供されています。「TuneIn Radio」など、各地のコミュニティ放送局を対象としたアプリも存在します。

IPサイマル(ラジオ)配信では、聴取可能な放送局が制限されることがあります。たとば、民放の「radiko.jp」とNHKの「らじる★らじる」のいずれも無償利用できますが、サービス提供エリアは日本国内に限定され、国外からの聴取はできません。「radiko.jp」の場合、運営上の都合によりサービス提供エリアは現在地付近、たとえば東京では首都圏近郊の放送局が対象となります。ただし、「radiko.jp」では日本全国のラジオ局が聴取可能になる有償サービス「radiko.jp プレミアム」を提供するなど、聴取エリアを広げることも可能です。

なお、IPサイマル(ラジオ)配信では、音声信号を符合化処理(エンコード)したうえでIPネットワークに載せるため、実際の放送とは数秒前後のタイムラグが生じます。一方、出演者や再生した曲のリストをアプリ上に表示するなど、実際の放送にはないメリットもあります。

放送波の番組をほぼ同時にインターネット経由で聴取できる「IPサイマル(ラジオ)配信」は、アプリを用意すれば無償で楽しめます