芝浦工業大学(芝工大)は3月31日、特定の銅錯体にレーザーを当てるだけで銅配線が形成できる技術を開発したと発表した。

同成果は、同大学工学部応用化学科の大石知司教授らの研究グループによるもので、3月22日~23日に開催された「表面技術協会第133回講演大会」および3月24日~27日に開催された「日本化学会第96春季年会」にて発表された。

従来、電子デバイスの配線材料には、高価な金や銀が用いられてきたが、近年は安価な銅の活用が進んでいる。しかし銅は容易に酸化するため、真大がかりな真空設備や複雑な作製プロセスが必要となるなど、結果的にコストや時間がかかってしまうことが課題となっていた。

今回、同研究グループは、熱分解性をもつ銅錯体溶液をガラス基板上に塗布し、レーザー照射することで銅錯体に化学反応を促し、連続的に照射することで銅を定着させることに成功した。これにより、銅微細配線を高速で形成することが可能となる。

同技術では、環境に依存することなく通常の大気中でも銅配線が形成できるうえ、銅以外はCO2などの気体として空気中に放出されるため、複雑な後処置も必要ないという。同研究グループは現在、数10~200μm幅での配線形成が可能であることを確認している。

同研究グループは同技術について、特別な環境下や機器を用いることなく銅配線形成を可能にするもので、ディスプレイやスマートフォンなどを容易かつ低コストに生産する技術として期待されると説明している。

銅錯体が溶けた青色の溶液を塗布後、レーザーを照射することで銅が析出。その後、熱処理で溶液を除去し目的形状を得る