小規模保育所の定員拡大をどう考える?

厚生労働省は3月28日、「待機児童解消に向けて緊急的に対応する施策」を発表した。保育所の認可化促進、施設整備費の支援、保活の実態調査などが盛り込まれている。その中でも議論が生まれているのは、小規模保育所の定員拡大だ。この点について、託児付きサービスを提供している「ここるく」の代表取締役で、保活事情に詳しい山下真実さんに聞いた。

待機児童解消までの"緊急的な取り組み"

今回発表された施策は、平成27年4月1日現在、「待機児童数が50人以上いる114市区町村」もしくは「待機児童を解消するために受け皿拡大に積極的に取り組んでいる市区町村」を対象に実施されるもの。待機児童解消までの緊急的な取り組みとしている。「受け皿確保のための施設整備促進」「企業主導型保育事業の積極的展開」など大きく5つの枠組みに分かれているが、中でも議論となっているのは「規制の弾力化・人材確保等」に盛り込まれている取り組みであろう。主な内容は以下だ。

(1)保育士の人員配置など、国の定める基準を上回る基準を設定している市区町村において、基準緩和を要請
(2)自治体が支援する認可外保育施設(東京都では認証保育所)の認可化を促進するために補助金を出す。さらに積極的に認可をしない自治体には是正を要請
(3)0~2歳児を対象とする小規模保育所の定員を19人以下から22人以下まで引き上げる(併せて例外として認められている3歳児以降の継続入園を推進する)
(4)保育士の勤務条件を改善(短時間正社員制度の推進や、保育士の子どもの優先入園など)

「3歳の壁」を甘く見てはいないか

この中でも特に小規模保育所の定員緩和について、山下さんは「0~2歳児の枠を増やしても、3歳児以降の子どもが保育所に入れない可能性がある」と懸念を示した。小規模保育所については、対象が0~2歳児となっている。そのため、3歳児以降は新たに保育施設を確保しなければならない。いわゆる「3歳の壁」が立ちはだかるのだ。

「3歳児の受け入れ枠が不足している認可保育園は、都市部で増えています」と山下さん。国は小規模保育所の定員緩和に併せて「小規模保育園等の卒園児の3歳以降の入園が円滑にできるよう、連携施設の設定に市区町村が積極的に取り組むよう促す」としているが、促すだけで果たして定員が確保できるのかは疑問が残る。

一方、施策の中で国は「小規模保育所において例外として認められている3歳児以降の継続入園をしやすくする」という提言もしている。小規模保育所の定員が拡大すれば、次の保育施設が見つからなくても、3歳以降の継続入園が可能になるという論理だ。

しかし国によれば、受け入れ枠が増えても人員基準や面積基準は満たす必要があるとのこと。つまり小規模保育所が受け入れ枠を増やすためには、保育士の数を増やしたり、保育所のスペースを確保したりといった措置が併せて必要になるようだ。山下さんは、「保育士が足りない、保育スペースが確保できないといった状況の中で、すぐに定員増とはならない小規模保育所も少なくないだろう」と語った。

"緊急的な取り組み"として出された今回の施策。根本的な取り組みの着手に、国がいち早く取り組むことを期待したい。

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