トレンドマイクロ 代表取締役社長 兼 CEO エバ・チェン氏

トレンドマイクロは3月24日、2016年の法人向け事業戦略を発表した。説明会には、代表取締役社長 兼 CEOのエバ・チェン氏と取締役副社長の大三川彰彦氏が登壇した。

エバ・チェン氏は、セキュリティの脅威が増大を続ける一方、企業のIT環境においては「サーバの仮想化」「ハイブリッド・クラウド」「モバイルデバイス」の導入が増えていることから、多層かつそれらの層が連携した新たなセキュリティ戦略に移行する必要があると訴えた。

同社は、「情報を保管するサーバ」「情報を交換するネットワーク」「情報を利用するユーザー」の3つの層に対し、最適なセキュリティ対策が必要であり、これら3つの層を連携させた形の"次世代"のセキュリティ対策が重要としている。

この次世代のセキュリティ対策を実現するためのコンセプトが「Connected Threat Defense」となる。Connected Threat Defenseは「Hybrid Cloud Security(クラウド&仮想化セキュリティ) 」「Network Defense(複雑化するネットワークの防御)」「User Protection(多様な環境におけるユーザーの保護)」という3つのレイヤーから構成される。

Connected Threat Defenseでは、同社の各種製品を連携させ、企業環境内の各ポイントでの脅威情報を俯瞰的に一元管理することで、脅威に対する迅速な初動対応や原因追究調査、感染被害範囲の最小化を実現する。

「Connected Threat Defense」の概要

チェン氏は「2015年にConnected Threat Defenseを構成する製品を完成させ、2016年はこれらを提供していくことができる」と語った。現在、Connected Threat Defenseを構成する製品のうち一部が連携に対応しており、今年中にすべての製品の連携が完了する予定だという。

「Connected Threat Defense」を構成する製品の連携に対応状況

「Network Defense」を実現するソリューションには、同社が買収したTippingPointの製品が含まれる。チェン氏は「高度な脅威を検知する、われわれの『Deep Discovery』とワイヤスピードでの防御が可能な『TippingPoint IPS』を組み合わせることで、新たなチャンスを生み出すことができる。また、TippingPointから300名のエンジニアを迎え入れることができたのも喜ばしい」と、TippingPoint買収による意義にも言及した。

トレンドマイクロ 取締役副社長 大三川彰彦氏

日本市場における法人ビジネス戦略については、大三川氏が説明を行った。国内では「グローバルでのアライアンスパートナーシップと国内のパートナー協業を融合し、顧客環境に最適なセキュリティを展開」を基本方針とし、「次世代技術の連携」「運用監視サービスの拡充」「ユーザー企業へのアプローチ強化」に注力していく。

「Network Defense」においては、ユーザー企業が仮想化・クラウド環境のメリットを最大限享受できるよう、ハイブリッドクラウド環境下でサーバを一元的に管理/保護する自動化されたシンプルなセキュリティ管理ソリューションとして「Deep Security」を提供する。

これにより、富士通やNECといった国内大手ベンダーとのクラウド分野で協業するとともに、グローバルの仮想化ベンダーであるヴイエムウェアとの国内連携を推進している。大三川氏によると、VMware NSXとSecurityを組み合わせたソリューションの実績は2ケタを超えているという。

「Network Defense」における具体的な施策

「Network Defense」においては、同社のネットワーク型脅威対策製品「Deep Discovery Inspector(DDI)」と顧客のシステムにすでに導入されている他社のSIEM(Security Information and Event Management)製品やIPS(Intrusion Prevention System)とのAPI連携を進め、DDIで検知した脅威を他社製品で 防御することを実現する。すでに、IBM、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ、パロアルトネットワークスと連携しているという。

「Connected Threat Defense」を構成する製品の連携に対応状況

「User Protection」においては、従来型製品群の次世代技術との連携により、エンドポイント・ゲートウェイ製品の最新脅威への対応能力の向上を目指す。また、クラウドアプリケーション向けセキュリティサービス「Trend Micro Cloud App Security」では、対応するクラウドサービスを拡張していく。

「Connected Threat Defense」を構成する製品の連携に対応状況

中堅・中小企業に対しては、パートナーと連携してクラウド型セキュリティサービス「Trend Micro Security as a Service」の導入を推進し、特にエンドポイント向けクラウド型セキュリティサービス「ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス」、クラウド型総合ゲートウェイセキュリティアプライアンス「Cloud Edge」に注力する。