富士通研究所は3月23日、サーバなどICT機器に搭載されているデジタル制御電源のマイコン上にソフトウェアとして実装可能な、電源の交換時期の自己診断技術を開発したと発表した。

ICT機器に搭載されている電源は寿命部品であり、特にデータセンターなど大規模な用途では効率的な保守が課題となっているという。

今回、富士通研究所独自の電源のモデルベース開発技術を用い、電源の劣化による制御回路上の信号変化の解析に成功し、電源制御のマイコンがこれまで利用していた情報のみから電源の劣化を測定する新しい方式を開発。開発した方式を、電源のモデルベース開発技術を用いた評価環境上にソフトウェア実装し、電源の劣化を監視する部品を追加することなく、交換時期を自己診断できることを確認した。

開発した技術は、「電源制御回路の信号解析技術」と「新しい電源交換時期の判定方式」。電源の制御に使用する内部信号は、観測するための測定器を接続するだけで、測定器からのノイズに影響され電源の動作に影響を与えてしまうため、これまで制御回路内部の状態を観測することは困難だった。今回、電源モデルベース開発技術を応用した解析環境を構築することで、回路内部の直接の観測に成功。電解コンデンサーの劣化度合いを変動させて取得したデータを解析した結果、電源出力の急変時の出力電圧を分析することにより電解コンデンサーの劣化が測定できることが判明した。

マイコンが取り込んでいる出力電圧信号(負荷変動時)

また、制御マイコンが取り込んでいるデータをもとに、普段、ICT機器が動作しているときに発生する負荷変動量に対する出力電圧の変動量と、電解コンデンサの劣化度の関係から、電源の交換時期を判定する新しい方式を開発。

電解コンデンサーの劣化の進行と電圧変動量

同技術により、データセンターなどの運用において、電源の交換を計画的に行うことが可能となり、保守コストの低減と信頼性の向上を実現するという。

富士通研究所は、同技術を搭載した電源の実機試作とサーバに接続した実証実験を進め、2018年の実用化を目指し、今後、自己診断の対象となる部品の拡張や、要交換となった電源が接続されたサーバから、動作中の作業を別のサーバに待避させるといった連係機能などの機能追加を進め、さらなるサーバ保守コストの低減、信頼性向上を推進していくとしている。