テクトロニクスは3月23日、USBリアルタイム・スペクトラム・アナライザ(スペアナ)の新製品「RSA5000シリーズ(RSA500)」「RSA600シリーズ(RSA600)」と小型USBリアルタイム・スペアナ「RSA306」のバージョンアップ製品「RSA306B型」を発表した。

今回発表された3製品。左からRSA500、RSA306B型、RSA600。(資料提供:テクトロニクス)

同社は2月にブランドロゴを一新し、製品中心のハードウェア・カンパニーからアプリケーションにフォーカスしたテクノロジー・カンパニーへと向かっていく方針を打ち出し、同方針のもと、IoTを重要分野の1つとして位置づけている。したがって、今回発表されたRSA500とRSA600は「IoTにおいて製品がどのように使われるのか」ということを強く意識した製品となった。

同社によれば、IoTの普及によりさまざまなメーカーがIoT製品に参入している一方で、エンジニアが新しくRF設計の専門知識を身に付ける必要があったり、多くの規格への対応が求められるなどの課題が出てきているという。IoT製品は必ず通信機能を備えていなければならず、その多くは無線で行われるためだ。また、フィールドでの電波管理においても、無線需要の増加による電波環境の悪化や、信号特性評価の多様化などに対応することが必要となっている。

IoTがもたらしたこのような状況は、スペアナ市場の低価格化をもたらしている。IoT製品のエンジニアは元々RF設計の知識があるわけではない。そのため、認証済みのRFモジュールを外部から調達してきて製品に組み込むケースが多い。この場合、IoT製品のエンジニアがスペアナで行うのはアンテナとのマッチングや機能チェックなどが中心となり、ハイエンドな機器は必要とされない。一方、RFモジュールを設計するようなエキスパートはハイエンド機器を使用するが、高価な機器を追加導入するのは難しく、市場では低価格帯のスペアナのシェアが増加しているというわけだ。

IoTは計測機器業界にさまざまな影響を与えている(資料提供:テクトロニクス)

このような市場背景の中でヒットしたのがテクトロニクスが2014年に発売したUSBリアルタイムスペアナ「RSA306」だ。リアルタイムスペアナは掃引型のスペアナと比べて発生頻度が低い信号の検出が容易というメリットがある。しかし、リアルタイム機能を備えたスペアナは高価で、気軽に購入できるようなものではなかった。これに対しRSA306はリアルタイム機能を搭載しながら50万円以下という低価格を実現し、市場から高い評価を得た。

RSA500とRSA600はRSA306では機能が物足りないユーザーに向けた開発されており、価格もRSA500が76万8000円~128万円(税抜き)、RSA600が89万8000円~128万円(税抜き)とRSA306よりは高い。ただ、同社によれば同等の性能・機能の他社製品と比べるとRSA500は20%以上、RSA600は約30%低価格だという。

RSA500とRSA600は、スペックは同じだがアプリケーションが異なる。RSA500はフィールドでの電波管理や干渉波調査での利用を想定。ベンチトップ型スペアナと同等の性能を備えるとともに、同一チャネルに出る妨害波まで発見可能なDPX表示、妨害波発信源の探索を効率化するマッピング機能などを備える。また、RSA500をバッグに入れて軽量なタブレットのみを手に持つスタイルが実現するため、腕の負担を軽減することができるとしている。一方のRSA600は実験室でのRFテストを想定。IoTで使われる最新の無線規格をサポートし、Bluetooth LE、WLAN認証試験前の事前テストや高度なEMIテストを行うことが可能だ。

フィールドタイプのRSA500 (資料提供:テクトロニクス)

R&D向けのRSA600(資料提供:テクトロニクス)

RSA306B型は上述の通りRSA306のバージョンアップ製品で、スプリアス性能、振幅確度が向上するなどしている。価格は49万8000円(税抜き)。

エントリレベルの新製品RSA306B型(資料提供:テクトロニクス)

また、無償のSignalVu-PC ソフトウェアもアップデートされる。新バージョンではUIの改善、信号識別データベースやマッピング機能の強化などが図られている。同ソフトは同社のオシロスコープ(MDO4K、DPO/MSO70K)、スペアナ全てで使用可能だ。

SignalVu-PVソフトウェアのアップデート概要 (資料提供:テクトロニクス)