三菱重工は3月22日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ政府宇宙機関「MBRSC」から、H-IIAロケットによる火星探査機「アル・アマル」の打ち上げ輸送サービスを受注したと発表した。

打ち上げは2020年の予定で、UAEの建国50周年となる2021年に火星への到着を目指す。

三菱重工にとって、海外顧客からの衛星打ち上げ受注は4件目となった。

アル・アマル

アル・アマルは、UAEが開発中の火星探査機で、同国にとって初の惑星探査機となる。アル・アマル(Al-Amal)は「希望」を意味するアラビア語である。

主に火星の大気に重点を置いた観測を行うことを目的としており、高い分解能で写真を撮影する高性能デジタルカメラの「EXI」、紫外線で高層域の大気や、酸素や水素の流れを探る「EMUS」、そして赤外線で大気の温度パターンや、氷や水蒸気、塵を探る「EMIRS」の、大きく3種類の観測機器を搭載する。

機体は地球観測衛星に似た六角柱の形状をしており、幅2.37m、高さは2.90mで、打ち上げ時の質量は約1500kg。設計寿命は約2年が予定されている。

打ち上げ時期は、地球と火星との位置関係から、2020年の7月ごろになると見られる。火星の到着は2021年に予定されており、高度2万2000km x 4万4000kmの長楕円軌道で運用される。

アル・アマル計画はアブダビやドバイなど7首長国によるUAE政府が2014年7月に設立したUAE宇宙庁が統括し、MBRSCは火星探査機設計など、技術面の取りまとめを実施している。

アル・アマルの想像図 (C) UAE Space Agency

開発中のアル・アマル (C) UAE Space Agency

海外顧客からの衛星打ち上げ受注は4件目

H-IIAロケットは2003年に誕生した日本の大型ロケットで、これまで30機中29機が成功しており、7号機以降は24機の連続成功を続けている。また13号機からは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)からの技術移転を受け、三菱重工が製造から打ち上げまで一貫して担う体制となっている。

H-IIAは欧州やロシアなど、他の競合ロケットと比べ価格が高く、また実績も少なかったことから、商業打ち上げ市場では長らく苦戦を強いられてきた。しかし、2009年に韓国航空宇宙研究院(KARI)の多目的実用衛星「アリラン3号」(KOMPSAT-3)の打ち上げを受注し、2012年に打ち上げに成功。これが三菱重工にとって初となる、海外衛星の商業打ち上げとなった。

2015年には、カナダのテレサットの通信放送衛星「テルスター12ヴァンテージ」の打ち上げにも成功。さらに2017年には、今回と同じMBRSCから受注したUAEの地球観測衛星「ハリーファサット」の打ち上げも予定している。

今回のアル・アマルは、これらに続く4件目の商業打ち上げ受注となり、また地球周回軌道を脱出する惑星探査機の打ち上げを受注したのは初となった。

また現在、JAXAと三菱重工では、H-IIAよりも性能を向上させつつ、コストを約半額に抑えた次世代ロケット「H3」の開発も進めており、2020年度の初打ち上げと、その数年後の市場投入が計画されている。

H-IIAロケット30号機 (C) MHI

【参考】

・三菱重工|UAEドバイのMBRSC から火星探査機打上げ輸送サービスを受注
 http://www.mhi.co.jp/news/story/1603225739.html
・Emirates Mars Mission - Mars Probe
 http://emiratesmarsmission.ae/mars-probe/
・Emirates Mars Mission - Scientific Goals
 http://emiratesmarsmission.ae/scientific-goals/
・Emirates Mars Mission - Space Vision
 http://emiratesmarsmission.ae/space-vision/
・Emirates Mars Mission - News
 http://emiratesmarsmission.ae/news/uae-mars-probe/