東工大など、超イオン伝導体を利用した全個体セラミックス電池を開発

 

東京工業大学、トヨタ自動車、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、J-PARCセンター、茨城県らは3月22日、過去最高のリチウムイオン伝導率をもつ超イオン伝導体を発見し、リチウムイオン二次電池の3倍以上の出力特性をもつ全固体型セラミックス電池の開発に成功したと発表した。

同成果は東京工業大学大学院総合理工学研究科の菅野了次 教授、トヨタ自動車の加藤祐樹 博士、KEKの米村雅雄 特別准教授らの研究グループによるもので、3月21日(現地時間)発行の英科学誌「Nature Energy」に掲載された。

現在のリチウムイオン電池は電解質として有機電解液が用いているが、全固体電池は固体電解質を用いる。電解質の固体化により、従来の電解液系では実現できない構造が可能となり、電池の高容量化・高出力化につながると考えられている。また、電池をすべてセラミックスで構成することにより、電池の安定性がさらに高まるため、全固体電池は次世代の蓄電デバイスとして位置づけられている。

同研究グループは今回、室温(27℃)で1cmあたり25ミリジーメンスという高いイオン伝導率を示す超イオン伝導体「Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3」(リチウム・シリコン・リン・硫黄・塩素)と、広い電位窓(電解質が適正に動作する電位の範囲)を持ち、リチウム金属負極の電解質として利用できる超イオン伝導体「Li9.6P3S12」を発見。

これらを用いて開発した全固体セラミックス電池は、数分でフル充電できるなど高い入出力電流を達成し、蓄電池とキャパシターの利点を併せ持つ蓄電デバイスであることが確認された。具体的には、既存のリチウムイオン電池より室温で出力特性が3倍以上になるとともに、有機電解液を用いるリチウムイオン電池の課題である低温(-30 ℃)や高温(100 ℃)でも優れた充放電特性を示した。加えて、室温や高温での高電流放電において1000サイクルに及ぶ安定した特性を持ち、実用可能な耐久性も確認された。

さらに、大強度陽子加速器施設J-PARCに茨城県が設置した「茨城県材料構造解析装置(iMATERIA:BL20)」による中性子構造解析により、「Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3」が三次元骨格構造を持つ物質であり、その骨格構造内にリチウムが鎖状に連続して存在していること、室温で三次元的な伝導経路を持っていることが、高いリチウム伝導性を実現していることを突き止めた。また、新しく発見した固体電解質は、これまでのLGPS系固体電解質とは異なり、室温においても三次元のイオン伝導経路が存在し、高い電池性能の発現に寄与していると考えられるという。

同研究グループは、「既存の蓄電池やキャパシターでは実現できなかった特性が、全固体セラミックス電池で実現できることを初めて証明した。数ある革新電池の候補の中で、このような優れた特性を示す次世代型の電池は皆無であり、今後、次世代電池の全固体への歩みを加速する道筋を開いたといえる。」とコメントしている。

超イオン伝導体の研究の歴史。それぞれの物質が発見された年代とイオン伝導率との関係が示されている。第一世代の材料は、イオンが固体中を高速で動き回ることの現象を追求する過程で探索された。第二世代の材料は実用材料として応用することも加味して開発された物質群。今回の発見した超イオン伝導体は、LGPS(リチウム・ゲルマニウム・リン・硫黄)グループの中でもイオン伝導率の値が25 m Scm-1と最も高く、既存のLi10GeP2S12に比べて2倍以上のイオン伝導率を有する。リチウムイオン電池に用いられている有機溶媒系より、かなり高いイオン伝導率であることもわかる



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