ホークスとの対決で見えた、公式戦へ向けた『駆け引き』の始まり【えのき…

 

ホークスとの対決で見えた、公式戦へ向けた『駆け引き』の始まり【えのき…

新球種を封印した大谷
 17日、鎌ヶ谷・ファイターズ球場でのソフトバンク戦は派手だった。いや、そもそも首都圏最後のオープン戦が「F×H」戦というだけで十分派手だ。球春到来だ。今年もこのカードは間違いなくパの上位対決だ。

 その上、先発投手が大谷翔平と摂津正と「開幕投手」の最終調整だ。ついでに始球式がJRAの人気者、藤田菜七子騎手だ。東京ドームでやってもけっこう埋まっただろう。

 で、これが良いオープン戦の見本みたいな試合だった。
 どういう試合が良いオープン戦の条件かというと「野球を見た後、野球を見たくなる」だと思う。公式戦じゃないのだから、こう前哨戦というか小手調べだ。同一リーグのライバル相手に手の内を全部さらけ出すかというとそんなわけはない。静かな火花が散るイメージだ。投手なら「見せない球」をつくるなど、リミッターをかける。事実、大谷は球速を抑え、新球種のチェンジアップを封印した。

 スコアブック上は福田秀平に初回いきなりホームランを浴びる等、5イニング投げて6安打4失点、大谷の出来はあまり芳しくなかったことになる。が、たぶん問題ない(それは5回8安打5失点と散々だった摂津にも言える)。「仮想・QVCマリン」の屋外球場で感触を確かめながら投じていた。あくまでリミッターの範囲内で。

 大谷の場合、感触の確認は春のテーマだ。去年も春先は立ち上がりに苦しんでいた。それでも最終的には「投手三冠」だ。修正力がハンパないのはこの日も2回以降、立ち直ったことが証明しているだろう。

 対決で面白かったのは柳田悠岐だなぁ。これは摂津vs中田翔にも言えることなんだけど、こう、挨拶代わりに思いきり振る。スイングの風切り音を相手の脳裏に焼き付けてやる、くらいの勢いだ。もう目先の結果なんてどうでもいいよ。本チャンの対決が楽しみでしかない。




すでに公式戦への神経戦がスタート
 ていうか、僕は野球の面白味は「プレッシャーのやりとり」にあると思うので、「挨拶代わりに思いきり振る」は本チャンが既に始まってるとも言える。ここまで投手vs打者の話ばかりしたが、この日、本チャンが始まっていたのは守備や走塁にも言える。

 一例を挙げる。7回表だ。ファイターズの投手は新外国人のマーティン。ソフトバンクとしては球筋を見ておきたい新顔だ。2メートル超の上背から投げ下ろす投球は、今季、脅威となりそうだ。今のところ中継ぎでフル回転しそうな評判である。

 マーティンは簡単に2死を取った後、本多雄一に四球を与える。と、本多はすかさず盗塁だ。捕手・市川友也の送球がワンバウンドしたこともあったが、それ以上に完全にモーションを盗まれていた。これはソフトバンクが本番前にプレッシャーをかけているのだ。マーティンに、市川に、そしてファイターズベンチに「モーション大きいからフリーパスだぞ」と脅しをかけている。

 これでファイターズ側は考えるようになる。バッテリーは走者を出さないよう投球に神経をつかうし、走者を出したら余計な警戒を強いられる。オープン戦のひとつの盗塁が、敵に長期にわたってプレッシャーを与える。

 この日はレアード、陽、中田にホームランが飛び出し、新聞の見出しをつくる材料にはこと欠かない試合だった。春の陽気に恵まれ、観客は文句なく楽しかったと思う。そして、これが大事なところだが「野球を見た後、野球を見たくなる」試合だった。これから始まるペナントレースの激闘を予感させ、両チームのファンが期待感を高める内容だった。プロ野球開幕が持ち遠しい。この気持ちはどんな不祥事を持ってこられても消せはしない。

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