[父を探して]せりふなしのアニメで想像力をかき立てられる アカデミー賞ノミネート作

  [2016/03/18]

「父を探して」のワンシーン

 ブラジル人監督アレ・アブレウさんによる劇場版アニメ「父を探して」が19日に公開される。2014年、アニメーションの映画祭としては世界最大規模を誇る仏アヌシー国際アニメーション映画祭で、最高賞の「クリスタル」賞と観客賞を同時受賞し、また、今年の第88回米アカデミー賞長編アニメーション部門でノミネートされた作品だ。

 ブラジルのとある田舎町で、両親と仲よく暮らしていた少年。ところがある日、父が出稼ぎのために列車に乗りどこかへ行ってしまう。父が恋しい少年は決意する、「お父さんを見つけて、家に連れて帰るのだ」と。かくして少年は、未知の世界へと旅立っていく……というストーリー。

 「デジタル要素の少ない作品を作りたかった」とのアブレウ監督の意向のもと、3年の歳月をかけて作られた今作は、デジタル技術を駆使し、リアルな描写を追求する昨今のアニメとは大いに趣が異なる。色鉛筆で描かれた、少年や両親、少年が旅先で出会う人々は至極シンプルで、その一方で、クレヨンや水彩絵の具、マーカー、切り絵などを多用し表現された背景は、万華鏡を思わせるカラフルなものや精密なもの、あるいは大胆にデフォルメされたものなどさまざまだ。それらが、デジタル技術によって一つにまとめ上げられることで、極めて抽象的ながら、だからこそイマジネーションを存分にかき立てられる作品になっているのだ。

 父を追って都会に向かった少年は、さまざまな出来事に遭遇し成長していく。遭遇するのは、いいことばかりではない。過酷な労働を強いられる農村の人々や、虚飾に満ちた都会の生活、独裁政権による戦争もある。そうした影の部分も盛り込み、ブラジルという国が歩んできたこれまでの道のりを描いていく。少年の視点で描かれているため寓意(ぐうい)性が強い。少年の目に、父を乗せた列車は、父をさらっていく昆虫に見え、木を倒す機械は、木をのみ込む怪獣に映る。アブレウ監督は、高畑勲監督と宮崎駿監督にも影響を受けたという。今作に、その片りんを見いだす人もいるだろう。せりふはない。よって字幕もない。お陰で映像に没頭でき、そのこともまた、想像の翼を広げる大きな助けになっていた。19日からシアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区)ほかで順次公開。(りんたいこ/フリーライター)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。


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